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『本好き女子のための従者と冷たい女王』の話。


 「従者」は「ヴァレット」と読んでください。
 どもども。
 吉秒匠です。
 半年ごとのおたのしみ、初めましてのみなさまに。

 はじめまして。

 それもこれも過去に吠えたあれやこれやのせいなのですが、なんだかんだで激増する訪問者様(あなたのことだ)はとてもうれしく、数名のあきらかにはじめましてのあなたにいたっては、読めるだけの過去の文章を読んでくださったようで。数時間かかったことでしょう(笑)。それだけの時間を無駄にしたのではないと思えるなにかをあなたが得られたことを願ってやみません。ディーン・クーンツを買ってくださったあなた。私は非常になぐさめられました。私の身に起こったことがなんであれ、したことがなんであれ、結果として私はこの世にこの国にクーンツ読者を増やしたのです。これでネズミにかじられても気づかないような老いぼれ朽ちてだだ漏れの水没した木のようになったときにも私はもうろうとした意識のなかでクーンツ伝道師として生きた記憶を反芻し多少の成果もあったとうなずいて逝けます。できれば、もっとあたたかくてやわらかいものに挟まれてなんにも考えられないほどの至福のなかで逝けるのが理想ですが、まあそれほど神に好かれていない自覚もあるので期待はしていません。

 で、と。
 本題ですが。
 正直言って腰がくだけました。
 いや、本当に正直に言うのなら、そんなどころではなく見えてしまったものを認めたくないあまりに自分の両目を突こうかと思ったくらいでした。とりあえずそんなときのための煙草を一服して落ち着きましたが。このサイトによく訪れてくださっているあなたはご存じの通り、私はかつてヘビースモーカーで、いまではガム中毒者で、煙草は年にひと箱も空かないたんなる嗜好品になっています。吸うのは、どうしようもなく煙草の似合うハードボイルドな俳優の演技に出逢ってしまったとき(近年あまりないことです)と、恐ろしく不幸なことがあって自分を殴る以上の負荷を甘んじて受けたいと思ったとき。たとえば葬式のあとなどが、そういうときです。身を清める塩よりも、こちらからあちらに近づく毒が欲しくなる。

 もちろん、先日のできごとは、後者。
 ハードボイルドなイイ男になんてまったく出逢いませんでした。出逢ったのは、文字です。表紙の文字。前回、この件に関して注意深く私の書くことをチェックしてくださっているあなたが「そうかなあ」と言っていた(というのは人づてに教えてもらったのですが)、どうもこの雑誌は某少女系小説誌の方向に行きたがっているかのような気がする、という予感。
 それはやっぱり「そうかなあ」ではなかったのです。
 目は突きませんでしたが、紫煙をくゆらせつつ、眺めました。

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本好き女子のための、ドラマティック・ライトノベル!!

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 という、いち文。
 幻ではない。
 その時点で私はまだその雑誌を開いてもいないわけですが、もっとも怖れていたことがまったくもって怖れていたとおりに目の前に現れたことで、自信、とか、闘争心、とかいうものはまったく消え去っておりました。
 あとで開いて読んだことは読んだのですけれど、メールでお話ししていた方々の結果のほうが気になったくらいで、自分のことはもうどうでもよくなっていました。いや、私の書いたものも作品としてはよい出来だと思います。あなたに読んでいただけたなら、よろこんでいただける自信もあります。しかしまあ、半分は……ずっと書いてきたことですし、いまさら繰り返してどうなるという感ですが。なぜ私は、その雑誌を愛しているのか。

 少年誌でも少女誌でもない中道をゆく。

 そう、明文化されていたこと。
 私にとってそれはとても重要なことでした。
 創刊号からの読者ですから、書き手としてよりも、読み手としての想いのほうがより強いかもしれません。私は男です。それもアクション映画と格闘技が好きな消費者です。アニメのたぐいはまんべんなく観ますが、いちじるしく男性向け、もしくは女性向け、な物語にはのめり込めない性質です。ギャルゲーもやりますし、BL誌も定期購読しています。だからこそ私にとって究極的に「おもしろい」物語とは、中道です。オトコもオンナも関係なく刺激する、それこそが行きつくところだと思ってる。

(という意味では今期のTVアニメ『CLANNAD』が近ごろ注目株。ギャルゲーなのにがっつり妊娠と出産を本域で語ってみせるAFTER STORY編に突入し、某調査ではKeyの女性ファンがまた増えているとか(原作ファンも思わずうなった『だんご大家族』のせいであるような気もそこはかとなくしますが……)。そしてXbox360でギャルゲーをプレイする一般女子層があらわれるという。たとえばそういうのが行きつくところの一例です)

CLANNAD

 漫画誌でいうと、週刊少年マガジンが実際のところ男性である少年のみをターゲットにしているかといえば、そうでないことはあきらかで、バクマンのセリフではないですが、週刊少年ジャンプも「マンガはおもしろいかどうか」だけだという姿勢がある。高橋留美子の女性ファンが少年サンデーとビッグコミックを支えていることは疑いようもないし、CLAMPが女子も男子も区別なく撃てる弾として各方面で珍重されていることは言うまでもない(カードキャプターのブルーレイでのリマスターも期間限定予約受付中ですよにいさんっ。買ってけっ)。

sakura

 いまガンダムが、ウィングス系と呼ばれる方によってキャラデザされているのは、最初はボーダレス化だとよろこんでいられましたが、今回の表紙といっしょ。この数年で、ガンダムそのものが女性向け路線を目指すという想像だにしなかった次世界にやってきてしまいました。

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『ゆんガンダムとCGスク水と萌え次世界』の話。

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 ……さて。そんなわけで。
 今回に至っては敗因分析するまでもなく。
 大まかに言えば、私が書いたのはこういう話でした。

「ルーマニアで拾われた少年がオッサンに育ち永遠の少女に服従する」

 スク水着替えさせたりね。
 少女のほうはヴァンパイアで不死だから中身はもうけっこうなお歳でイジワルいドSなわけです。まあ端的に言えば、それはドSとドMが出逢ったという幸せなお話。愛する少女は永遠に少女のままなのに、オッサンはヒトだから死ぬのです。実は少女がオッサンをひと噛みすれば同族にできるのですが、少女は永遠の少女であることに自分で嫌気がさしているし、オッサンにはあなたもあたしと同じ永遠の命が手にできる、なんて言ってない。そこにダンディーパンクなバイク乗りの男ヴァンパイアとそいつに噛まれてヴァンパイアになったことを後悔しつつもある美青年の微妙なBL的ふたり連れがからまってきて話がややこしくなる……
 みたいな(笑)。  

 あらすじでわかりますよね。
 はっきり大人向けです。
 少女にいたぶられるオッサンと、ヴァンパイアのベテランにおちょくられながら旅をする新米ヴァンパイアの青年。そのあたりが萌えどころ。私が狙ったのはかつて少女だったが、いまでも心は少女で、でもさらっさらなお話では物足りなくて、ちょっとウェットな、なんて言うかぬめっと、あまつさえねろねろんな、そういう話を暗に求めているオーバー30あたりからの層を狙い撃っていたわけで。
 表紙の「少女向け雑誌になりました」の宣言で、自殺しなかったのが不思議なくらいです。
 ていうかだったらなぜ三次選考まで通っているのかが謎だ。
 どこからどう読んだって少女向けでないことは私がいちばん知っている。
 むしろこんな物語を十代の少女が欲するとしたら、そんな少女に私が萌えられない。
 いや、別に私が萌える必要はないわけだが。

 けっきょく、私が目指していたのは、きれいなドMのオッサンと、きれいで高飛車なロック系ヴァンパイアと、ひねくれたベビードレスの似合うパンチラ全開の美少女と、ヒトをやめたばかりで青年になりかけた歳で刻の止まってしまった最近ちょっとブルーな美少年による、全方位萌えへの過剰乱射だったのだけれども、そんなの少女だけに売りたいと思いはじめた女王には「なに書いてんだ吉秒」というところであるに違いなく。

 だってもともと、その全方位狙いの雑誌だからこそ目指したんだもん。
 なあ。おれ、どうしたらいいのさ、この表紙。
 いま書いてんのも、おもいっきり美少女暴れてます、いままさにアスファルトの上で彼女は人外の追いはぎに遭っているところだ。サービスカットをイラストレーターさんに描いてもらおうと作った場面だが。
「本好き女子のための、ドラマティック・ライトノベル!!」
 で、そんなものがサービスカットどころか無垢なお嬢様の眉間に生まれて初めてのシワを刻ませる役にしか立たないことは、私にだってわかる。もちろん今回もヒーローの登場は風呂場で男の肌も露出しまくりだし頭から葉っぱが生えていたりもするのだが、そっちも狙えばこっちも狙うの姿勢でここまで書いてしまったこれを!!
 いまからプロット段階まで巻き戻してキャラデザしろと?

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「今はアンケートを送ってくるのは30%は女の子だからこれが結構大きい」
「僕達のは平均年齢が高く女の子にはウケない…」


 原作・大場つぐみ 漫画・小畑健 『バクマン。』

BAKUMAN

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 実際のとこ、ガンダムやジャンプでさえそうであるなら、もともと中道を行くことで「ちょっと同人通」な雰囲気を醸しだしベタな少女向けなんか読んでいるコとは違うわあたし、というところをピンポイントで撃っていた感もある女王が、この時勢、漫画ウィングスの別冊の地位を捨てて独立した「少女誌」となったことは、当然の流れではあるのだろう。
 当然なんだよね。
 女王は育ちすぎてしまった。
 その規模ではもう、隙間よりもメインストリームを狙うのが正解なのである。
 私のような過去からの読者もつれたまま、新たなそして大きな市場に踊り出そうとする、彼女は生き残るだろう。
 でも。やっぱり、ショックは大きい。
 ずっと読んでいたんだもの。
 ずっと書いてきたんだもの。
 その本の創刊20周年記念号の編集後記に、そんなの。

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「女子じゃないぞ」という読者様にはホントに申し訳ありません。

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 謝られたよ。
 あやまられてしまいましたよ、まさに私が。

 待ってろ「本好き女子」!!
 ……叫んでみても。
 なんだかなあ。
 私は、私に問いかける。
 
 吠えてナンボのキャラのくせして。
 読者様にはホントに申し訳ありません。
 純粋に応援してくださったあなたには。
 心底、頭を下げさせていただきます。
 でもヴコ女王と健気なミルチアの話は、いつかあなたに読んでもらいたい。



 

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