最近の記事

スポンサードリンク

月別アーカイブ

『オリンピック開会式をいまさら語る』の話。

 いやまあ決算期。そして締め切り。
 まだ足りないね。私の体力が足りない。
 朝からにんじんのきんぴらなど大量に作っておりまして(弁当用を休日に小分けして冷凍する習慣)、このあいだの『タモリ倶楽部』で高橋克実さんが濃縮めんつゆの素だけできんぴらを作っているのを見て、彼は東京のきんぴらが甘すぎることへの抵抗だと言っておられましたが、大阪のきんぴらだって甘くって。甘い総菜の苦手なくせに、でも私も自分できんぴら作るときには、みりんを入れてしまっていた。固定観念ですね。というわけでにんじんをごま油で炒めてめんつゆ。大葉とごまと唐辛子をばらまいて。一週間分の弁当副菜の完成です。そんなこんなで、我が家の冷凍庫には弁当箱サイズにカットしたすでに揚げてあるコロッケや白身フライなどが詰まっているのとあわせ、毎日の弁当は三十秒で作れます。

 そうやって、ないところから時間を作って。
 組み上げた毎日の寄せ集めを、まとめて推敲していく月末なのですが。
 軽く規定枚数の二倍以上書いてしまったものを、いまから削ります。
 今日が締め切りです。今回は難産……大雑把にいうと下僕の物語なんですが……しもべ。いわゆるラノベにありがちな、ご主人様キャラに勝手にしもべ呼ばわりされている普通の男子高校生、などという甘っちょろいものではなく、がっつりクロアチアで子供のころにさらわれた孤児で女王のもとで彼女を崇拝しながらすてきなおっさんにまで成長したしもべ、というのが今回の私の愛するわが子でして。
 どうなんですかね。
 女王は不死のヴァンパイア。
 しもべは、ヒトだから老いて死ぬ。
 選べるなら、しもべはみずからも不死の存在になるべきでしょうか?
 でも、彼の人生のすべてが、不死の者という宇宙の法則を超越した存在への畏敬の念によって成り立っているのだとしたら……で、ラストあたりで、セリフをあっちやったりこっちやったり、いろんなパターンでしもべ気分で感情移入して独り芝居してみるのですが。
 いやあ。私ならヒトのまま逝くかな……
 というあたりに傾いている現在午前中ですが、午後にはわかりません。

 いま書いてみて思ったけれど、そんな映画があったな。主人公が神になってしまって、ラストが神なんていっても万能のチカラがあるだけで、万能のチカラがあったって得られないものはいっぱいあるんだというような……なんだっけ。
 思い出した。
 『ブルース・オールマイティ』
 モーガン・フリーマンの「神」が記憶に残ります。コメディなのに、なんか実に神ってああいう感じの存在でありそうで。秀逸です。フリーマンは大統領役なんかも似合っちゃうのが、見た目からすると不思議。どうみてもレゲエのやさぐれたおっさんのほうが似合う風貌なんだが、なにか威厳のある役どころが似合うんだな。そういうバランスが名優の名優たるところなんでしょう。
 ジム・キャリー。
 シリアスに走ってから、どうもぱっとしませんね。
 シルベスタ・スタローンが「映画人生のなかでコメディに立ち寄ったのは時間の無駄だった」と言ったように、ジム・キャリーも徹底したコメディのヒトでいいと思うんだけど。

TIS

 そういえばオリンピックがいつのまにか終わっていました。
 たぶん、一生懸命、数の合わないカーナビの在庫を探しまわっていたころに終わっていたのですが、今回はほとんど時差のないぶん、深夜帰宅の生活ではリアルタイムで競技を見ることはまったくかないませんでした。といって、録画して観ることもなく。オリンピックイヤーにテレビや録画機が売れるというのは、私にはどうもぴんと来ない現象です。
 そんな私も、たまたま祖父の四十九日の法事のおかげで、開会式はリアルタイムで観ていました。

 オリンピックが終わってからの新聞の総括記事で、共産党の独善だと非難されていた開会式。映画好きでプロレス好きの私は、張芸謀(チャン・イーモウ)監督の演出した、巨大ギミックとけばけばしいまでの光、重力を無視したワイヤーアクションに「おー」と歓声をあげながら飽きずに観たのだけれど。あとになって、それはいいのかと叩かれていたのを知った。

 歌の上手な女の子と、容姿端麗な女の子を別々にオーディションして、口パクさせた。
 生中継の表示がありながら、花火がCG合成だった、とか。
 それらを指して、独裁国家の倒錯した自己アピールだと書いていたのは読売新聞。

 ……正直、なにを非難しているのか、私には理解しがたい。
 ちょっと待てよと。
 だったらそもそも、このオリンピックの芸術顧問はスティーヴン・スピルバーグ監督に依頼されていたのである。なぜそれは叩かなかった? スピルバーグは中国の政治を非難して辞退したが、演出はその中国が誇る超絶映像派映画監督のイーモウ。
 ちょっとまちなさいよ、と。
 カメラマンから世界的監督となった彼が仕切るショーで、選択肢があると思うほうがどうかしている。
 イーモウが、口パクに関してこう言った。

「重大な問題ではない。創作の一種だ」

 で、それをデリカシーがないと記事にしている新聞がある。なんでも、会場に歌声だけが流れた少女が、精神的に落ちこんで引っ越しまでしたんだという。で、だから?
 新聞記者はイーモウの『LOVERS』を観なかったのだろうか。
 金城武がCG合成の豪華絢爛な自然世界で愛を戦う名作である。
 私は大好きだ。
 そして私の期待通りの、壮大な演出が開会式では行われていた。
 だったらなにか?
 イーモウが、こう選択すると、本気で思うのか?

「多少感動が薄れても、歌を歌う少女の気持ちに配慮して見目麗しくない本人を舞台に立たせよう」

 まさか!
 ていうか、その選択は共産党の独善だとかいうものなのだろうか、私にはそう思えない、それは映像派の映画監督なら当然そうする選択だろう。それを許した共産党がうんぬんと言うなら、スピルバーグやイーモウに中国がオファーを出した段階で叩くべきだ。イーモウはいいが、その演出は独善? 出演者の心情に配慮して演出すべきだったという論調こそが奇々怪々である。『HERO』の監督が、映像のクオリティを上げるためにできることをやらないなどと選択するはずがないのは、だれが見てもあきらかだと思うのだが、どうやらそうではないらしい。不思議だ。

HERO

 足跡の花火CGだってそう。
 ライブ中継の表示があるのにそれはダメだというなら、新聞はもっと早くフジテレビのK-1や、いまは亡きPRIDEの生中継のリングの上でくるくる回っているCGを詐欺だとこき下ろすべきである。違うだろ。うわ花火で足跡、これマジ、でもウソでもいいよ、だってそれを見て「うわ」と思った興奮は本物だもの。プロレスファンには当たり前の論理展開なのだが、感動した映像が、ガチかどうかなどと論ずるのに、なにか意味があるだろうか。心の揺れ動いた事実が、演出過剰だあれは嘘だったのかと、自分の目でテレビ画面に見たもの以外の情報で貶められるなら、その人の心というのはなんてつまんないものだろうと思う。たぶんそういうヒトはコスプレを理解しないのでしょう。本物ではないから萌えられない? 萌えてしまえば幸せなのに(笑)。
 足跡の花火に見えたんだから。
 イーモウ・マジック。
 さすがっすね監督、すごい画でしたと。
 すなおに私は拍手を送りたい。
 ぜんぜん競技を観ていないから、私にとってのオリンピックは、チャン・イーモウ監督の最新作でした。

 すごかった。
 忘れない。
 あれだけの規模の舞台を、ありったけの金つかって全精力で演出できる……すべての創作者の夢だ……それを見事以上にやりきった、イーモウ監督に「口パクはいかがなものか」と質問した新聞記者の無粋さにミサイルを撃ち込みたい。
 どっかーん。
 アメリカとロシアが、ふたたび冷戦突入か、というなか。
 中国はみずからが大国だと世界に知らしめて。
 隣のあの国は、なんかまた駄々こね出しているし。
 そんなののまんなかに浮かんでいる日の本の国は、けっしてのほほんとしていられる状況ではないと思うのだけれど。

 でも、のほほん、と。
 おたくんとこの監督の演出スゴかったよ。
 そうやって褒めていいんじゃね、と思う。
 なんでこの国の新聞が、オリンピックの開会式を政治にからめて批判するんだ。
 意味がわからん。
 なにかを批判したくて仕方ないのか?

 ちなみにチャン・イーモウ監督の『紅夢』が好きです。DVD化されていないんですけれど、いま私の書いているものが「ヒトの血を飲んで瞳を紅く染める夢に棲む少女とそのしもべの物語」という時点で、多大な影響を受けています。この映画のスタッフは『非情城市』を撮ったメンツの多くだったりもするのですが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『台湾旅行記・非情なるジブリの町』のこと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 いまになって思うのは、意外と香港ノワールにはまってその影響を受けながら、香港映画ということで一緒に摂取していた、映像派な監督たちの作品も、一緒に血肉になっているなと……きっと、あのころの香港映画が大好きだったみんなが感じていると思うのです。中国のあのころの、稀有なバランスで泳ぐ大国になりきれない流れのなかで創りあげられた作品たちは、ほかの時代、ほかの国ではぜったいにありえない、独特の空気を持ってしまっていて。それはたぶん、オリンピックをやり遂げて、大国復活だとみずから沸いている、ここからは、またちょっと違ってしまう。
 あのときの香港の画。
 いまになると、あれがすごく危うくて、それゆえに二度と作ろうとしても作れない素敵なものだったんだと気づく。いまの台湾の空気が、ちょっとそれに似ている気がするから、いま私は台湾を見てしまうのですけれど。銅メダルばっかりで、やっぱ中国には勝てないのかと、落ちこんでいるらしいですが、なにくそと奮起してもらいたいものです。ゲリラで撮った中国舞台の台湾映画とか、だれか気炎上げて撮らないかな。それも政治無関係に、まったくもってエンタメなやつを。
 出てきそうで楽しみで。
 待っているんですが、なかなか。

 世界が揺らぐとき、映画ファンはわくわくする。
 不謹慎だけれど。
 端正でないもののなかからこそ、うひょってものが生まれると思う。
 いや思うのではなく、映画観てきた人は、知っているのです。
 虚構は現実のミラーではない。
 緊張感高まると、遊ぶ場所は増えるんだ。

 イーモウ監督、一世一代のお楽しみだったはず。
 次の夏オリンピックはロンドンですね。
 イギリスでエンタメの大御所監督といえば……ポール・W・S・アンダーソンで決まりか……会場にピラミッド建てて『エイリアンVSプレデター』を駆けまわらせて、ついでに『バイオハザード』のゾンビ犬も駆けまわらせて、聖火の最終ランナーはもちろんロンドンで高校時代を過ごしたという『DOA』主演、デヴォン青木。もちろん『モータルコンバット』のパイプをぎゅんぎゅんトバされるマシンで登場して聖火台にダイブ。
 うは。楽しみだ。

 四年後だし、もう内定はしているんでしょうね。
 次のヒトも、懲りずに裏切りと呼べるまでの演出を期待します。

DOA

 さあ、地獄の推敲に向かうとするか。
 私も、楽しもう。
 倒れていなければ、また来月、お逢いしましょう。
 いますでにそうとう頭痛しているんですけれど(笑)。

TRACKBACK http://yoshinogi.blog42.fc2.com/tb.php/213-c314ea9b