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『台湾旅行記・そしてピザを焼く』のこと。



 別に、なにかあったってわけじゃなくて。
 ただ、そんな気分だっただけ。

「あのさあ、じゃまなんだけど」

 その言葉に傷つく。
 じゃまなんだ……
 それでもぼくは、全身でツゥイの背中にくっついていた。
 ツゥイの言葉を、全否定するために。

「こねにくいんだよ」

 それでもぼくは離れない。
 台のうえの生地を両腕でこねるたび、その背中では筋肉がダンスしている。
 そっと耳を触れると、速まってゆくツゥイの鼓動が聞こえる。
 ピザの生地をこねるくらいでツゥイが心臓をばくばくいわせるはずはないから、きっと、ぼくがくっついているせいなんだろう。
 ツゥイは怒っていない。
 ツゥイはぼくに気をつかっている。
 そんなのは、いらないのに。

「ほら、好きなの、のせな」

 できあがった生地をまるくのばして。
 煮詰めたトマトソースをすっぱくそのうえに広げて。
 バジルと、チーズと、ブラックペッパーをふりかけて。
 ツゥイが言うので、やむなくぼくは離れた。
 急いで具をのせないと、ツゥイはチキンでいっぱいのピザにしてしまう。
 ぼくはコーンとマッシュルームがのっていればいい。
 あと、ちょっとだけのニンニクと、アスパラガスも好き。
 アスパラガスのくせに白いのはアスパラガスじゃない。
 ちゃんと緑色なのを、今日もツゥイは茹でてくれている。

「もういいか?」

 そう言って、オリーブオイルをたっぷりかけて。
 ツゥイは、ピザをオーブンに運んでいった。
 戻ってきて、ぼくの隣に座る。
 250℃のオーブンの液晶が、20:00からのカウントダウンをはじめてる。
 19:59……19:58……19:57……
 ぼくが、死んでいく時間。
 ぼくが、ツゥイのそばにいる最長記録を更新する時間。
 でもぼくは、満足できない。

「なんなんだよ今日は」

 ぼくの瞳が潤んでいることに気づいて、こっちを向いた。
 ツゥイの両方のほっぺたをはさんで、引き寄せる。
 ひたいに、ひたいを触れた。
 キスの気分じゃない。
 それは、かなしい確認の作業になってしまう。
 だからぼくは夢見て、ツゥイのひたいに、ぼくのひたいをぶつけた。
 こつっ……こつっ……こつっ……こっん……
 強くぶつけすぎて、ぼくも痛かったんだ。

「新しい、いじめか、なにかなのか?」

 ツゥイにはわからない。
 ぼくが、触れるたびに、想うことを。
 こつっ……ずぶ……とろり……ぐちゅん……
 と、オーブンのなかのチーズみたいに。
 どうして、ぼくはツゥイに溶けてゆけないのかと。
 こんなにも歯がゆく、想っていることを。
 ぼくは、泣きはじめてしまった。
 そうしたらツゥイが、ほっぺたに唇を触れた。
 それ以上には近づけない、ツゥイとぼくとの境界線を。
 ほっぺたにも、また見つけた。
 ぼくは、ツゥイを突きはなす。
 17:46……17:45……17:44……
 ぼくらが、ピザのうえのチーズには、なれない時間。
 溶けあえないと絶望する、新しい一秒。
 ツゥイの口を両手でこじ開けて、ピザみたいにむしゃむしゃとぼくを食べてもらえば、消化されたぼくはツゥイの一部になれるだろうか。
 ぼくを食べてよ、とぼくは言ってみた。
 ツゥイは、笑った。
 ぜんぜんなにもわかっちゃいない。
 でもそれしかできない。
 くだらない、肌のふれあいを。
 オーブンが鳴くまで続けて、時間を浪費する。
 ぼくにもわからない。
 どうやったらぼくをピザの具にして、ツゥイに「本当に」食べてもらえるだろうか。
 ぼくが終わって、ぼくはツゥイになる。

「ぼくは、ピッツァに、なりたい」

 なんだよそれ、と答えたツゥイを、噛んだ。
 このまま食べちゃおうかと思う。
 15:01……15:00……14:59……
 いそがないと、溶けたチーズが焦げてしまう。
 そんなの、とても食べられない。
 ツゥイにむしゃぶりつきながら、ぼくは泣いていたことを忘れてく。
 まあ、そんなふうに……
 ぼくらは、時間を無駄にして終わるんだよね。
 くっだらない。


 Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 4
 『Please eat me like the pizza !!』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 4曲目
 『ピッツァみたいにぼくを食べてよ!!』)

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 現地の話につかれてきたので(でもやめない)、時間軸がとっちらかってしまいますが、帰国後のピザパーティーの話でも。以前にジャンバラヤの話をしたとき、ピザのレシピうんぬんと語っておきながらずっと放置していたのを、ようやく書く機会でもあるなと思いまして。

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『ジャンバラヤで喰うケイジャンの魂』の話。

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 台湾みやげというと、パイナップルケーキなどが有名で、妻などは中国茶を買いあさっていましたが、甘いものにもお茶にもときめかない私は、そんじゃまあ、各種の味噌調味料と、からすみとか買って帰って、ふるまいつつ話でも聞かせようかと。

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 余談ですが、台湾の方々が、日本に観光に来たさいに電気製品を買って帰る話をこのあいだ書きましたが、いわゆる豆板醤やXO醤などがところ狭しと並んだ店に、普通の味噌がないのは不思議なことだねと話していたら日本語の流ちょうな店の人が教えてくれた……台湾の方々、日本みやげに味噌を買うのが定番らしい。味噌スープを飲む文化はあるのだけれど、中国系の味噌は塩辛いばかりで、日本の奥深い味噌文化に触れると、とても中国系には戻れないんだそうだ。ああそうなのか、そういえばアメリカなんかでミソスープといえば、やっぱり日本発祥のものだと認識されるのは、日本の味噌がいかに特殊で優秀なものであるかの証明なのだね。食のわびさび和の心。ほんと幸せな国に生まれたと感謝しました。

 そんなこんなで、ピザを焼く。
 まずは生地。

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○材料

強力粉 500グラム
ぬるま湯 370cc
砂糖 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
ドライイースト 大さじ1
塩 ひとつまみ

○作り方

・ぬるま湯をボウルに入れます。
(370ccというのはカップにおよそ2杯という数値。パン生地が作る人によって味が変わるという大きな理由がここに。温度にして40℃を切るくらいのぬるま湯なのだけれど、これはもう感覚のもの。気をつけるべきは、冬場はお湯の温度を上げてしまいがちなこと。むしろぬるいのは発酵に時間がかかるだけであって失敗はしないが、お湯が熱すぎるのはイースト菌が死んでしまってまったく膨らまなくなります。迷ったらぬるめに。指入れて、風呂ならぬるすぎて入れないくらい)
・ドライイースト、砂糖、オリーブオイルを加え、泡立て器でシャカシャカまぜます。
・イーストが溶けたら、強力粉の半量と、塩を加え泡立て器でドロドロまぜます。
・泡立て器を洗います。
・泡立て器を片付けます。
・おもむろに袖をまくり(ていうか半袖着用を推奨。むろん事前に手を洗え。洗っても手のひらからにじみ出るエキスがパンやおにぎりでは重要な味のエッセンスになると中華のエライ人が言っていたので、ラップでおにぎりを握ったり、ゴム手袋をしてピザを焼いたりするのは、大嫌いな相手に食べさせるときだけにしましょう)、強力粉の残りを投入して、まずは片手でこねくり回します。
・まぜてもまぜても、まったくべとついて生地がまとまる気はみじんもしないでしょうが、あなたが分量を間違えていなければ、こね続けるうちに打ち粉なしでテーブルの上に移せる団子ができあがるはずです。
・ボウルから自由になった生地は、腕力でねじ伏せてください。
(日頃から拳腕立て伏せをして手首がグネっってならないように鍛えておくことを推奨します)
・よく耳たぶの硬さで、のばしても切れ目ができないくらいまでこねろとか言いますが、細かいこと気にしないでも、ピザには具がのっているのでパンとは違って生地のきめ細かさなどそう気になるものではありません。疲れない程度でこねるのをやめましょう。あなたが100キロ程度のバーベルを上げられるなら、1分もこねれば充分。
・ボウルにオリーブオイル(分量外)を塗りたくり、まとめた生地をぶち込んで、膨らんでもボウルにくっつかないようにオイルをまぶしながらボウルの底のほうに押しつけます。
・春夏秋の初めごろまではなんかフタして室温で。冬はコタツの中か、オーブンに発酵機能があるなら、アルミホイルでフタをしてオーブンに。
・小一時間で倍の大きさに膨らみます。
・膨らまない場合は膨らむまで待ちます。
・それでも膨らまないときはクリスピーな生地を作ったと思ってあきらめます。
(実際の話、それはそれで美味いのでまったく問題ありません)
・オーブンの大きさにもよりますが、25センチくらいのピザなら三等分してちょうど。棒なんて使わないで、両手でのばすのです。破れたり、きれいな円にならなくても、だからなんだというのだ。むしろゆがんだあなたの部分を愛しなさい、愛してもらいなさい。
・ふくらみ具合はドライイーストの種類にもよるのだけれど、うちでは定番中の定番であるこれ使っています。
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他のメーカー品が、ご親切に小袋に分けてくれているものが多いのですが、粉500に大さじ1と身に染みついている私にとって、そういうのは逆に「自由にやらせてくれ!」と放課後の校舎で廊下のガラスを素手で割ってまわりたい気分になってしまうのです。イースト買ってきたら開封後はガラス瓶に詰めて冷凍庫へストック。これが減ってくると落ち着かない気分になる我が家の常備品なのでした。

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 んで、ピザソース。

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○材料

ホールトマト缶 1缶

○作り方

・トマト缶を鍋にあけ、木べらで潰しつつ、半量になるまで煮詰めます。 

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 以上。
 半分をジャンバラヤとかパエリアに使ったのなら、残ったのを煮詰めて一回分。
 庭に月桂樹の木があるなら、ローリエを入れても。
 先にニンニクのみじん切り炒めてとか、塩コショウしてもいいし。
 私はバジルパウダーとオリーブオイルに、ピザの具にするため焦げ目をつけたチキンの焼き汁なんかも足したりしますが、バーベキューソースとピザソースは太陽の国のママの味というくらいで、各自、好きなもの入れたり入れなかったりでいいのではないでしょうか。
 ちなみにソースは作っては冷凍するの繰り返しです。
 冷凍庫に煮詰めたトマトソースがないとそわそわしてしまいます、これも常備品。
 ちなみに、これがソテーした鶏肉とソース。

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 フライパンの直径は15センチ。
 ピザ作るにはフライパンはこれ一枚でいい。トマトの酸味でものすごい鉄分が溶け出している証拠に、トマトソース作ると鉄フライパンがつやつやになります(笑)。

 で、生地とソースができたので
 あとは好きな具をのせて焼くだけ。
 まったく生地が見えないまでに具をのせても、250℃に予熱したオーブンで20分も焼けば生地に火は通ります。
 我が家ではソテーしたチキンとゆで卵、ニンニクスライスたくさんと、タマネギ、そしてチーズ。ピーマンのせて塩コショウして、パセリふりかけてオリーブオイルかけてオーブンへ、がスタンダード。
 今回は、飢えた小羊どもに好きな具をのせろと指示を出しただけでしたが。

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 小羊たちは総じてバカなので、好きにしろと言われるとありったけの具をのせてしまいましたから、想像に難くないでしょうが、メインであるはずのカラスミの存在がまったく埋もれています(写真の一番手前にかろうじて見える赤い小さな切れ端がカラスミスライス)。
 毎週のようにピザを焼くため、我が家ではピザは白ごはんのようなもので、思えば、客人に白ごはんを出さないように、ピザを客に出した記憶というのがない。
 私にとっては手抜き料理なんですが、嬉しかったんでしょうね。
 私のみやげのからすみなんて無視で、みんなピザに夢中でした。
 楽しかったからいいですけど。
 ピザ作ったら、ぜんぜん話が進まないということがよくわかった。
 大きめの魚焼きグリルがあるなら、フライパンで焼いて、グリルに入れることで、オーブンなしでも調理できます(両面焼きグリルならフライパンもいらない)。屋外でダッチオーブン使ってというのも良いね。フタにダッチチャコール山盛りにして。焼き上がった一枚目を食べるあいだに二枚目を焼く、パン生地の焼ける匂いと、チーズとトマトソースがぐつぐつ煮えてひとつに溶けあうのと、カウントダウンしていくタイマーの数字と。あまりにもガツガツ食える料理なんで、逆にほんと、ときどき想う。
 食べたらみんな帰っちゃうんだなあ、とか。
 こんなにも時間を共有しているのに、想っているのに。
 人と人って、他人なんだよなあ、とか。
 これ以上は一体になれないんだよなあ、とか。
 本能だけで行うセックスとか、だれかと一緒の食事とか、その最中に、当たり前のことを、ちょっと切なく想ってしまったりとか、ありません?
 私はピザを焼いて、食べるときに、よく想う。
 
 だからきっと客には出さないんだろうな……

(毎度のことですが、だらだらと不要な文章がレシピの邪魔をしていて、使いにくくてごめんなさい)

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