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『ターワの島の童話』のこと。

 世界の片隅にあるちっちゃな島国であるヤマトンの国の残虐で獰猛な兵隊たちが、でっかいチャイノ王国を征服しようと思いついて攻めだしたのですが、広い公園みたいな城に住んで温暖な気候のなか、のほほんと暮らしていたチャイノの王さまは「なんとかしろよあの怖いやつらを」とセバスチャンたちに申しつけたものの、結局のところ死ぬ気で攻めてくるとち狂った征服者たちにあらがう戦力などなく、なすがままに王国は踏みにじられていったのです。

 ──そんななか、ヤマトンの兵隊たちはチャイノの領土である小さな島に目をつけました──
 小さいとはいえ、その島は同じ島国なヤマトンの十分の一ほどの広さがある島であり、独自の文化を持つ人たちがいっぱい暮らしている、島。

 王さまは、平和に暮らすその島の人たちをヤマトンの連中にわたしてはなるものかと、あわてて芝居を打ったのです。

「われわれはターワの島の民であり、
 チャイノなどという王国とはまったくの無関係!」

 島の住民たちが自分たちでそう言っているのだから、あの島は我々の統治する土地ではない、どうかヤマトンの兵たちよ、あの平和な島をそっとしておいてやってはくれまいか。

 王さまは言いましたが、まあ、とち狂った残虐な征服者にそんな政治は関係ありません。
 芝居だったにせよ、チャイノ王国からの独立を叫んだその島の人々は、自分たちでも「そうかぼくらはチャイノの人民でなくターワの民なのか」と思い始めましたが、それもむなしく、ヤマトンの兵隊たちにあっけなく占領されて植民地になってしまいました。

 栄枯盛衰。
 それからまもなく、ヤマトンの兵隊たちのあまりの馬鹿な暴れっぷりに、関係ない世界の大国たちも「あれを放っておいては世界の脅威になる」と、みんなで協力してヤマトンの国をやっつけることに決めました。ヤマトンの兵隊たちときたら、狭い島国でありながら負けるくらいなら死ぬなどと叫んで本当に叫びながらつっこんできたりしてとても手強く、まったくもって神をも畏れぬモンスターじみた者たちで──そのときの戦争によって世界に「小さなカラダの狂気じみた武者」として知れわたることとなったヤマトンの末裔たちは、後世において世界中のプロレスのリングでヒール(悪役者)として引く手あまたとなり、食うに困らなかったそうです。一重まぶたが怖いともっぱらの評判です。

 いっぽう、ターワの島の人々は、ヤマトンが滅んだことによってあっさりとチャイノ王国の人民に戻ったのですが。
 チャイノの新しい王さまたちが、二度とどこかの国に攻められてはなるまいと、ターワの島に積極的に政治家たちを送り込みはじめたところ、あったかくて平和だった島がどうにも暮らしにくいことになり、徐々にターワの島の人々は、前の王に演じさせられた芝居だったはずの大合唱を思い出したのでした。

「われわれはターワの島の民であり、
 チャイノなどという王国とはまったくの無関係!」

 叫びは、次の世代ではちょっとだけ変わってしまいました。

「われわれはターワの国のターワ人であり、
 チャイノなどという国とはまったくの無関係!」

 その後、戦争によってターワの島に避難させられていたチャイノ王国の金銀財宝をチャイノに返すかわりに、本当にターワ国として独立してしまおうという計画なども持ち上がるものの、いまにいたるまで、島民たちによる真の決起は起きずにいます。
 しかし、いまや、ターワの島には総統と呼ばれる独自のリーダーが存在し、今月の末には、次代の新しい総統が選挙で選ばれる。
 彼らは、選挙で島民たちに、チャイノからの独立をしようとすすめてはいない。
 彼らは、大国となったチャイノと交易を続けながら、世界に正式に認められたわけではないものの、そこに厳然と存在する自分たちの「国」を発展させようと志している。
 きけば、あたたかで平和な、昔のターワの島の雰囲気に戻っているという。
 チャイノの人々は、いまでもヤマトンの末裔たちを憎んだりもしているが、ターワの島の人々は、彼らに対してさえ寛容であるらしい。

 なんかね。
 総統選の様子を眺めていたら、そんな童話を描けてしまった。

 今月末の総統選の結果が、どうなるかわからない。
 しかし現段階で、ターワの国の人々は、いままでになかった選択をしようとしているようだ。
 彼らが熱狂している新総統候補は、こう叫ぶ。

「われわれはターワの国のターワ人と名乗らない。
 チャイノから独立する気もない。
 われわれは世界の一員である!!」

 うまくやって平和に暮らしたいだけだ。
 戦争とかもううんざりだし、みんななかよくやればいいじゃないか。
 ほら、みんな遊びにおいでよ、われわれはあなたを歓迎する。
 競り合う総統候補ふたりは、競り合っているのに異口同音に。
 チャイノと、世界と、もっと交流しようと言っているのである。

 総統候補の暗殺計画が暴露されたり、けっして平和ばかりではないんだけれど、そのニュースも、それほどまでに非独立をうたう候補が躍進しているという事実をあらわしている。
 なんか、良い島なんだろうな、と思ったんだ。
 総統選直前ていうタイミングも、おもしろい雰囲気そうだし。
 ちょうど、旅に出ようかと思っていたし。

 というわけで、ちょいとターワの島を覗いてきます、あしたから。

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