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『ジョアンナは肉ほねっこしか食べない』の話。

 この先の旅を思うと、プラムの誘惑に負けたことを後悔しそうにもなったけれど、デイパックの中にチューブ入りおろしワサビを隠してあることを思い出してさっそく取り出した。

nakatani

 中谷美紀 『インド旅行記1 北インド編』

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 それでも彼女は、この先の旅でさっそく腹痛に苦しめられることになる。
 だとしてもワサビの殺菌効果は本物だ。
 信頼できる『あるある大事典』でも取りあげていた日本産の本ワサビのみに含まれるワサビスルフィニル(6-MSITC・正式名称「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート」)の効果は絶大で、その解毒代謝酵素は発がん性物質までもを無毒化するとされる。活性酸素の発生も抑制し、血流も良くなって動脈硬化を予防、結果としてダイエットにも効く、というのは嘘ではない。

 ところで、チューブワサビには、
「本ワサビ入り」
 と
「本ワサビ使用」
 と、それらの表記が一切ないものにわけられる。

 そのボーダーラインはメーカーによって異なるが、一般にはチューブ内の50パーセント以上が本ワサビであるかどうかであるらしい。とはいえ、いわゆる寿司屋ですりおろしているワサビの地下茎の部分はまったく保存に向かないので、本ワサビ使用といっても、寿司屋に卸す地下茎を取ったあとの上の部分が主原料。これがじゃがいもなら実ではなく葉っぱを刻んで入れてあっても「じゃがいも使用」ということになるのだが、まあ嘘ではない。ということは「入り」などという表記に至っては、近所のコンビニで買ってきた「本ワサビ使用」のチューブワサビを工場の生産ラインにぶちゅーと一本ひねり出しただけで表記できるシロモロということになる。

 では、チューブワサビの主原料とはなにか。
 大根だ。
 原材料としてちゃんと書いてあるんだからまちがいない。本ワサビ使用のものだと西洋ワサビと半々というようなブレンドのものもあるが、西洋ワサビもでっかくて白い色をした見た目にはワサビよりも大根か芋に似た植物である。いずれにせよ、本ワサビよりも辛み成分は高く、色は白いので着色が欠かせない。
 そしてその辛み成分に殺菌作用があるということはまぎれもないものの(刺身に大根のつまが添えてあるのは、寿司屋のショーケースにワサビが盛ってあるのと同じ理由とか)、それはすなわち「辛くて菌も繁殖しない」というたぐいのものであり、日本産本ワサビだけに含まれると信頼スジ『あるある大事典』でもおなじみワサビスルフィニルの超絶殺菌作用などとは比べるべくもない。

 というわけで彼女はやっぱり腹痛になるのですけれども。
(でもインド一人旅と言いつつ至れり尽くせりの女優旅っぷりなのでホテルのベットでぬくぬくで「ヨガができない」とか呟くわけですが。なにに共感しろというのかいったい。その女優っぷりを苦笑しながら読むという楽しみはあります。結論をまったく出さないひたすら迷うだけの論調が貫かれていて、好きではないが、不快ではない)
 というマクラをフッておいて本題。

 なんだか朝からゴンドラにぎゅう詰めの山のような物体をペット売り場の担当者が引きずっていた。
 なにそれ?

「ゴンタヘンピンシジでたの」

 ごんた返品? 新聞に載ったのと彼女が言うのだが、さっき読んだ新聞にそんな記事があっただろうかと私は首をかしげる。

「小さい記事だったもの」

 しかたないわよ、と彼女はいまいましげに言った。
 なにかといえばこのニュースのことだったわけで。

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<ふっくらソフト>
誤表記内容:一定期間の間、原材料表記部分に、肉類(ビーフ・チキン)と表記しておりました。
※当該期間はビーフは配合しておりませんでした。

<ほねっこ>
誤表記内容:一定期間の間、原材料表記部分に、「白身魚」と表記すべきところを「ササミ」と表記しておりました。


 ペットフード サンライズ

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 ふーん。
 関係ないと思っていた食品不祥事連鎖がこんなカタチで。
 しかし不謹慎ながら、私はぼそっと言ってしまった。
 ササミ味って書いてあるけどささみ入ってなかったってことだろ?

「それってイチゴポッキーにイチゴが入っていないのと同じでは?」

 彼女はますますいまいましげな顔になりました。

「ポッキーの原材料にイチゴって書いてないでしょ」

 ああ、書いちゃっていたんだ。
 バカだね、パッケージにササミ味ってだけでいいのに。
 でも彼女曰く、原材料に書いてあったとしても、ペットフードではなんら法に触れるものではないのだという。そういうものなのか、確かに人間向けのミミガーは高いのに犬用ブタミミはあんなに入って五百円っておかしいと思ってはいたんだが。だったらなぜ回収?

「うちのコは魚入っていると食べないのよ、ってお客さんは多いの」

 と、少し哀しそうな顔になった。
 うん、よくいるよねそういうお客さん。
 逆に、肉は食べないのうちのジョアンナちゃん、とかいうヒトも。
 そういう意味では「ふっくらソフト」の「肉類」という表記でビーフ味にビーフ入っていなかったというのはともかく、鶏肉ササミ味で原材料にもそうやって書いてあって、でも白身魚が入っていましたというのはマズいわけだ。法律うんぬんではなく、肉しか食べないあたしのミハエルが、ご褒美の「ほねっこ」実は白身魚を嬉々として食べていた、という事実。あたしの「ミハエルって肉しか食べられない野性的でセレブなわんちゃん」トークが今後繰り広げるのに支障あり、ってこと。

 話の顛末をきいて、結局私は思ったんだった。
 やっぱりイチゴポッキーじゃないか。
 別においしければイチゴが実際に入っているかなんてどうでもいい。
 タマゴとか小麦とかのアレルギーにかかわる表示はともかくさ。

 私が中学生だったころ、通学路に赤福があった。
 いま思えばふつうに冷凍車停まってた。
 あれも結局「うちは当日作ったものしか売っていない」とうたってしまったから問題だったので、実際にはみんながおいしいと言って食ってだれも損なんかしていなくて、もしもそこに損が生まれたのだとしたら、あれは嘘でした冷凍して解凍してまきなおしていました、と聞いてしまったあとに生まれた不快感なのであって。
 私は安いコロッケがスーパーからなくなることのほうが哀しい。

「イチゴが入っていないならイチゴポッキーなどこの世から消え失せろ!」

 ということにならないのは原材料に書いていないから?
 だったらペットフードはこの先「肉類」とかいう後ろに「(ビーフ・チキン)」とか書くのをやめるのはもちろん、さらに先へ行って「タンパク質」とか「脂質」とか「タンスイカブツ」なんて表示にするのが安全だろう。もともと規制の法律がないのにバカ正直に書いておいて、ササミがないときはササミを抜けばいいのをサンライズは「栄養価を保つために」別の動物の肉を足したということだ。
 良いヤツじゃん(笑)。

 ちなみに当該商品をお買い上げの方は、商品のバーコードを切り取って送ってください。
 ちゃんとした材料で作ったの送ります。
 袋切り取ったソレですか?
 いやだってあなたのオタクのわんちゃん様、材料違うと食べられないんだから、バーコード送るだけでもう一袋って二重取りなんじゃない? というのはおかしいですよ、だってオタクのわんちゃん様、生臭い魚の混じったほねっこなんて見分けて顔そむけるんですから、捨てるしかないでしょう?
 栄養価的には完璧な商品ですけど。

 つぶつぶ苺ポッキーのブツブツは乾燥イチゴだけれど、同じ味のなにか違うものだったら売れないかといえば、これはきっと売れない。その場合には、原材料に書いてある「乾燥苺」という表記こそがマーケティングの要なので。ということを考えると、ササミ味のペットフードを裏返しても、どこにも鶏肉などと書いていない、それを消費者が受け入れるときというのは「イチゴポッキーにイチゴは入っていない」と、わかって愉しむケースと同じこと。だったらそんな未来では、売り場につぶつぶ苺ポッキー相当の、本当にササミを使ったでも値段は二倍する商品も並べておけばいいってことじゃないだろうか。

 チューブのわさびなんて食えねえ。
 というヒトは私のまわりにもいる。
 私もまわりに辛党で知られているので、良い唐辛子とかわさびとか、すすめられたりするんだけれど、正直なところ好きで大量消費するためにかえって自宅の野菜室には中国産の唐辛子が詰まっているし、ディスカウントショップの「本わさび入り」の表示さえないわさびでぜんぜん平気。ていうか気にせずガツガツつかえる、そういうほうが結果的に食事がおいしい。
 犬も、安いおやついっぱいもらったほうがうれしいんじゃないかしらん。
 良いエサあげたら鼻の濡れ方が違うとか、人間のプラシボ奴隷なせいなんじゃなくて?

 うたい文句を厳密に審査するのが近ごろのムーブメントみたいだけれど。
 きれいに騙されるのが心の平安を生むっていう気もするよ。
 あたしがいいんだからいいの。
 大根をわさびって書いて売るなー
 と叫んで明日から売っているチューブわさびがぜんぶ本物になって値段は三倍になって、いまやっていること突き詰めるとそういうことになっていく気がするんだけれど、それってだれの得になるのだろう。まがい物のごっこ遊びを愛でる洒脱さと、ほんまもんの優雅を摂取する気高さが、売り場に同居している雑多なのがイイカンジだと思うんだ。

 まあ、バレたときに自分が窮するような嘘をつかないことだけだよな。
 ほねっこも要はあれでしょ。
 白身魚と一緒に近所のスーパーで買ってきた人間用の焼き鳥でも一串、ラインに放り投げ込んでいればそれで嘘ではなかったのに。
 正直過ぎるというか……ムーブメントのなか、暴露してもうけたヤツがやっぱいるんだろう。
 そういう、すさんだ構図にこそ幻滅する。
 ニュースってヒトを幸せで豊かにするものでなくちゃいけないと思う。
 近ごろ一般紙もカストリゴシップあおってばかりで、ふしだら、です。

gonta

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