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『人造脂肪肝美味』の話。



ringo

首刈り族の刈った首のミイラが展示されていた。
国立民族学博物館
太陽の塔の隣にあるその建物の
そのまた隣に国立美術館はあった。
はじめて生のフランク・ステラ作品を観た場所だ。
むしろ隣の池でボートに乗るのがデートのメインだった。
しかしその出逢いはその後の私の人生を方向づけた。
あの国立美術館が大阪中之島に移転した。
年明けから大阪コレクション展というのをやっていて。
生アンディ・ウォーホルの『花』が展示される。
私は国立美術館の会員証を持っている。
常設展なら好きなときに観られるし、
企画展は各一回ずつ観られる。
私は『花』にもう一度逢うことがあるだろうか。
思いながら観た。
ウォーホル作品は頭を悩ませる。
花を死体を未亡人をスープ缶を。
極彩色で大量生産。
意味が消失する。
中之島の地下に、
極彩色の巨大なマリリンモンローが並んでた。
セクシー?
ビューティフル?
それとも悲劇の人?
いやウォーホルのカンバスの中で。
彼女は彼女でさえなく花でもなく。
アクリル絵の具だった。
マリリンそして花の模様に絵の具が刷かれただけ。
でもだから悩んでしまう。
マリリンてなに?
花ってなんなのさ?
このきれいなのは絵の具が?
それともマリリンや花が?

Andy Warhol

──美術館の隣にレストランがある。
鉄人の店だ。
デザートに焼き林檎を頼んだ。
きれいだった。
林檎のくせに。
おいしかった──それは。
味なのか装飾なのか。
それとも林檎なのか。
食べている途中で悩むのはやめた。
おいしい、でいい。
きれい、でいい。
林檎が描かれた一皿を食べた。
林檎で描かれていた。
記憶とはそういうモノ──
ステラとボート──ウォーホルと林檎。
花──マリリン──美術館。
そんなこんなで、私はここにいるのであった。
ふうむ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あえて紹介しないでもNMAO併設のレストランということですぐ見つかる店だが、これが意外に単品のデザートだけ食べに来る「梅田はうるさすぎる」という文化系少年少女と、午後から数時間美術館観て食事して帰る(もしくはシケ込む)、という大人な雰囲気のみなさんや、焼き林檎に歓声をあげる彼女に満足げなちょっと背伸びした学生さんやなんかが、混在して良い雰囲気な地下の店で。

Foiegras

 単品ではメニューに存在しない大根にフォアグラの乗った煮たのがコースだと頼めるのですが、こいつがパンをガツガツ食える濃い味の絶品でおすすめ。パンがすばらしくおいしい店でもあるのだけれど、催促しないとおかわり持ってこないので、遠慮せず頼もう。あとはビールを頼むと「どこで売っているんだ?」というプレミアムなビールが瓶で出てくるんだが、これが小瓶で、酔うほど飲もうと思うとリーズナブルな料理の価格設定が台無しになります。ハンバーガー屋は薄めたドリンクで稼ぐから100円バーガーテイクアウトの客だけだと採算が取れないというのと同じ理屈で、得てしてフランス料理なんてものはドリンクが料理の価格を凌駕してしまうもので……紹介しておいてなんだが、私が好んでフレンチとか食べないのはそのせいが大きいと思う。ワインの味なんてわからんもん。フォアグラがテイクアウトできたなら、週一で買いに行くんだけどな。帰りに千円札でワインとビール買って帰んの。

 近年、アメリカのカリスマシェフが「動物愛護の観点からうちの店ではフォアグラを出さない」と宣言したことで、アメリカ全土でフォアグラ排除運動が展開されていると聞く。確かに、天井からぶら下がった巨大バケツからのびるホースを、全体重をかけて押さえつけた巨大ガチョウの喉に突っ込んで強制給餌する光景は、エロ業界における「拡張モノ」などを連想させ趣味でない人には笑顔で見ていられる光景ではない。
 脂肪肝という状態を人為的に作り上げるという行為が人道的であるかどうかは、切り刻んで屍肉になった羊の肉を同じく屍肉になった牛の背脂で包んで揚げる料理とやっていることは同じだが

「生きているうちに脂肪を加える」

 から人非人ととらえるかどうかの問題だろう。私は母親が牛飼育農家の娘だったこともあり、名前がちゃんとあって可愛がられていたその牛が食卓に肉になって出てきたり、締まって良い肉質になるように子牛の段階で去勢されたりするのを目の前で見たりして、多かれ少なかれ人に喰われるための動物は改造された生き物だという認識なので、だったらおいしく改造しておいしくいただくのが食す生き物としての決意だと思う。

 そういう意味では、花や植物を愛する人にとって『林檎の焼死体氷菓子添え』なんてのも充分にグロい気がするんだが、だれも「なぜわざわざみずみずしいリンゴをしわくちゃでくたっとした人造料理にして食べたりするのですかおぞましいっ」などと言い出さないところをみると、それはつまりガチョウには尊厳があってリンゴにはないということなんだろうか。

 考え出すとよくわからなくなる。
 だが。
 アメリカで「なにが可哀想だから食わない」運動をするのは勝手だが、だからお前らも犬を食うなとか、クジラは知的生物だから食うなとか、フランスでもフォアグラ作るのやめろとか、そういうこと言うのはお門違いな気はする。

 (そういえば先日、電車の中で女子高生の話に耳を澄ましていて、というか大声で話しているので聞こえてきて「オトド」がどうのと言うからなんのことだろうとしばらく考えていたのだけれど……「どうぶつパン」というメニュー名が出たので、それが『マックカフェ』の話だとようやくわかったときには笑ってしまった。「オトナマクド」をさらに縮めているのであった。正式な略称で売り出されても、あくまで「マック」ではなく「マクド」だと言い張る関西人精神はすばらしいがキミらの開発したに違いない「オトド」はさすがに定着しないと思います(本人たちもたったいま考えついたのだろうソレを口にするたびバカウケしていたし)。その後、彼女たちは「どうぶつパン」のイヌさんが実にかわいらしくブタさんがいかにいまいちかを熱く語ったあげく……「食べるのかわいそくなかった?」「中国ってイヌ喰うらしいよ」「マジありえへんっ」という話の流れで、車両中がどんよりしたのでした。国名を出すなら小声で話せ)

 余談だが『時をかける少女』で「弟のおちんちんをちょん切ってしまうためのハサミ」というトラウマ小道具が出てくるが、私はいま職場でチェーン切り売りをするときに使う巨大ニッパーを持つたびに、子牛の睾丸を巨大ペンチでぶちんと音を立てて使い物にならなくしたあと、振り返って「きみのもやっちゃろうかい?」と笑った広島弁な獣医の白衣の背中を想い出してしまう。ガキに向かって不用意にホラーな冗談を口にするものではない。 

tokisyo



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