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『凶獣クリス・ベノワのクソ凶行』のこと。



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 ↑今日も次々とあきらかになる事実。
 もう、なにがなんだかわかりません。
 でも、はっきり言えることもある。
 ここにあるのは失望だけだ。
 本当には、なにがあったとしても。

Chris Benoit

 クリス・ベノワ。
 その男が死に、これまでにわかっていることのいくつか。

●ベノワは、日曜日にタイトルマッチが組まれていたテキサス・ペーパーヴュー大会を土曜日の午後になって「家族の緊急事態」とだけ告げて欠場する意向をWWE本部に伝える。関係者は当日来場の可能性も模索し、翌日曜日の飛行機便をベノワのために予約したが、その飛行機にベノワが乗ることはなかった。

●日曜日、大会を欠場する意志を固めていたベノワは、早朝、三時五十一分からの七分間で、五通のテキスト・メールを仕事関係者に送っている。一括送信するには七分は長く、事前に書いておいたメールを、送信のさいになって数分間、躊躇した可能性がある。

●日曜早朝のメールのうち二通は、WWEの社員リチャード・へリングと、ベノワの同僚レスラーであるチャボ・ゲレロに送られており、メールの内容が月曜日に自宅を捜査官に捜索させてくれ、という内容だったため、ベノワの自宅があるジョージア州ファイェットビル郡保安官が出動要請を受ける。

●新築したばかりのベノワの自宅は、厳重な防犯設備のうえ、二匹のジャーマンシェパードが放し飼いになっており、応答のない自宅内部に保安官が進入するまでに多くの時間を要した。その後の現場検証も時間をとり、ベノワの自宅内部の様子がWWEに第一報として伝えられたのは、月曜日午後四時のことであった。

●月曜日午後十時。捜査に当たったポプ警部補による記者会見が行われた。

 そして、私は知った。
 新日本プロレスで活躍し、WCWの雄だった。
 ベノワがメールを送ったチャボ・ゲレロはエディ・ゲレロの甥だ──エディが逝ったとき、チャボが最初に電話したのがベノワだったという──そのチャボにベノワはメールしてきた。

 『エディ・ゲレロの死』のこと。
 『PRIDE対UFCとWWEの偉大なる歴史』の話。

 ↑読んでもらえばわかると思うが、私は日本のプロレスが好きで、WWEはWCWからの流れで観ているプロレスファンである。こういう私にとって、エディ・ゲレロは、そしてクリス・ベノワは、特別な存在だった。特にWCWの時代にみせたベノワの孤高の闘いぶりは、昨日までの私にとって指針といえた。エディの死は哀しかった。しかし今回はあのときとは同列に語れない。世界でもっとも尊敬されるレスラーと呼ばれるまでになった、ベノワは死んだ。だが、それだけではない。

●記者会見では今回の出来事は「自宅における多重殺人事件と自殺」と発表された。

●現場の状況から、クリス・ベノワ(40)はナンシー夫人(43)を絞殺し、就寝中だった息子ダニエル(7)の顔に枕を押しつけて窒息死させたものと推測される。その後、自宅の地下にあるトレーニング・ルームで自らの首を吊った。

 この凶行の原因について、いくつかの見解。

●公称プロフィールにおいてさえ180cm100kg(実際の身長が180cmもないことは衆知の事実である)という、日本のプロレス界においてさえジュニア・ヘビー級の骨格でありながら、世界最高峰のヘビー級タイトルをいくつも奪取したベノワが、筋肉増強剤ステロイドを常用していたこともまた、衆知の事実だった。40歳を迎えたベノワが、現在のWWEトップレスラー陣の潮流である過剰にビルドアップされた肉体と並んで見劣りしないためには、その摂取と極限を超えたトレーニングが必要となっていた状況が推察される。同年代であるHHHやショーン・マイケルズがかつてのユニット『D-ジェネレーションX』を復活させるなどしてキャラクターで観客を魅了するのに対し、新日本プロレスとWCWで『nWo』旋風が吹き荒れていた当時に群れることを嫌う一匹狼としてキャラクターを確立させたベノワが一線で戦い続けるためには、アンチエイジングな方向で突き進み、衰えを拒絶するしかなかった。ステロイドには、鬱病の兆候が出るという副作用がある。

●ベノワの息子、ダニエルが脆弱X症候群(fragile X syndrome)であったという発表が公式にWWEから出ている。これは現在唯一、遺伝性であることが確認されている精神発達障害であり、脳の発達に必須な遺伝子の一つFMR1遺伝子が含まれるX染色体の異常のため、本来必要である蛋白産物が合成されなくなり、結果、脳の発達が促進されないという障害。X染色体に異常が認められるが発症しない保因者(脆弱X症候群の診断を受けているのは全保因者の一割程度であるとみられている)を含め、数千人に一人という発生率の高い症候群である。ダニエルについても他の子供と対話することができず他の子供を恐れているという周囲の証言があり、自閉症の兆候があったものと推察できる。脆弱X症候群においては、男児のほうが女児よりも症状はあきらかであり、知能障害に至る女児が患者の3分の1であるのに対し、大部分の男児が精神発達遅滞をきたすと報告されている。かつて、クリス・ベノワに対し、同症候群の支援団体が、尊敬されるレスラーであるベノワに団体の顔になって欲しいと正式依頼したことがあったが、これをベノワは拒絶した。

 ステロイドに関しては、スポーツの世界ではもはやなにかあるたびに原因として取りざたされるものであり──だからといってそれが原因ではないという根拠にはならないが──ステロイドの副作用による鬱状態が原因で家族を殺したなどと言い出しては、鬱であることが殺人者の要因であるかのようにとらえられてしまう──これははっきりと間違いだ。鬱病で自殺したという話ならともかく、他人を殺したことに対し、それはなんの説得力も持たない。

 ここには失望しか生まれない。世界でもっとも尊敬されるレスラーは、自らそのすべてを黒く塗りつぶしてしまった。その生き様を指針にしていた私のようなファンを、まったく無視して。

 殺人者になった。

 優秀なフィクション作家なら、男女の心中を美談として書くことは可能だろう──辺境の島国の練習生から世界最高峰のチャンプになった男と、その男を惚れぬいた女が、世界の頂点に立ったとき、建てたばかりの巨大な新居の中こそを、人生の終着点としてともに死を選ぶという、メロドラマに仕立てることはたやすい──しかしそれが読者の共感を呼ぶとすれば、そこには男も女も、自分で自分の人生を選んだという大前提があるからだ。好きに生きて、好きに死ぬ。選んで一心同体になった二人が、だれにも迷惑をかけずに逝ったのなら、それがどんなに愚かしくても、私はエディのとき同様に、彼らの死を悼んだだろう。

 けれど、七歳のダニエルは。

 パパのことが、ママのことが好きだったにせよ嫌いだったにせよ、選んでクリス・ベノワの人生にかかわったわけではない──子供は、他人だ──痴話喧嘩の果てに心中になったという話とは、まったくの別の話だ。私の尊敬していたレスラー、クリス・ベノワは、先週、七歳の子供の顔に、マクラを押しつけて殺した。同じ日に、彼の鍛えられたその腕で、最高のエンターテインメントが演じられる、それを観られると座席に座り、PPVの料金を払ってテレビの前にいた、すべてのファンを裏切って。
 その腕一本で生きてきた、彼の商売道具で。
 力いっぱい七歳の男の子の息の根を止めた。

 最悪だ。失望しかない。
 その状況を見れば、なぜまず妻の首を絞めて殺したのかについて、これも最悪な想像しか思いつかない──脆弱X症候群は遺伝する。ただし、それがX染色体に含まれる異常であることから、保因者男性クリス(XY)は、もしも彼に娘(XX)がいたならばその全員に前変異を伝えるものの、息子(XY)には伝えない。一方、保因者女性ナンシー(XX)の子供には性別に関係なく五十パーセントの確率でこの遺伝子が伝えられる。
 クリス・ベノワには、息子(XY)がいた。

 彼が、リングで演じたキャラクターのいくばくかが本当のことならば、おそらく彼は、原因を取り除いたあと、結果にマクラを押しつけるとき、叫び泣きわめいていただろう。そうして、苦悩のすべて(だと彼が感じていたもの)がすべて息絶えた世界で、傍目にはそれこそが苦悩の源(みなもと)のように思えるトレーニング・ルームへの階段を降り、自分も終わらせた。

 彼ほどのエンターテイナーが、想像できなかったのだろうかと不思議だ。

 それならば順番を入れ替えて、トレーニング・ルームで自分を終わらせるのを真っ先に持ってきていれば。

 そこで世界は終わったのに。
 自分なしで、妻も息子も生きてはいけないと思ったのだろうか。
 七歳の息子が?
 いま他人を怖がる上手くコミュニケーションをとれない状態であっても、生きている息子が。
 自分なしでは幸せを感じることはけっしてないと?

 クリス・ベノワの身長は私と変わらない。
 でもとうてい、どんな努力をしたって、私は世界最高峰のヘビー級チャンプになれるだなんて、夢にも思えない。
 彼は、夢見た時点で勇者だったし、きっとその野望を実現させる過程は、ほとんど狂気の沙汰だっただろう。
 カラダを破壊し、改造し。
 心を病んでまで。
 それでも彼はチャンプになったのだ。
 ありえないことにヘビー級の世界最高位に。
 彼はもっとも尊敬されるプロレスラーだった。
 それに異を唱える者なんてだれもいなかった。

 昨日までは。
 最悪だ。失望だけしかない。
 七歳の少年の未来を彼は信じられなかったのだ。
 そんな世界は壊してしまえと勝手に決めた。
 世界一、可能性を信じている男だったはずのクリス・ベノワが。

 私はいま本当に泣いている。
 悔しくて。

 生み出したキャラクターは、もう創造者のものではなく、それを愛したすべての人たちのものだ──偉大なるおこないは、観客を得た時点で、もう演者だけのものじゃない──その姿がだれかの勇気となったとき、その姿はもう、だれかにとっての祈るべき十字架であり、その十字架を建てただれかが、祈るだれかの信仰を理解できないとしても、すでにそこに十字架のある以上、建てた本人にさえ蹴倒す権利なんてない──十字架を支えるのがしんどくなったなら、そっと消えればよかった。残された十字架に、人々は建てただれかの偉大さを思い、そこからまた絶えることのない勇気を得ただろう。

 ひとりで逝けばよかったんだ。
 クソ野郎だ、あの男は。
 追悼番組も観る気になれない。
 こんな裏切りを、私は許せない。

 ものすごくむずかしいことだけれど、どんなに落ち込んでいて、どんなに酔っていて、かつての彼の雄姿をどれほどなつかしく想い出したって、私はもう絶対に「ああ、クリス・ベノワは良いレスラーだったよなあ」と口にしない。思いもしない。最終的に七歳の少年を窒息させることに使われた筋肉で、演じられたあのクローズライン、ナイフエッジ、ジャーマン・スープレックス──
 すべてクソだ。

 悔しくてしかたない。
 私の大切な宝物が、コナゴナになった。
 かつて尊敬していたひとりのレスラーが。
 一夜にしてコナゴナにした。
 自分で自分の生んだすべての世界を。
 だいなしにした。

「おれはお前たちを愛してる!!」

 嘘でもリングから言ったからには。
 彼には少なくとも演じる責任があった。
 やりとおせないこと。
 それは最悪だと、私は彼から学んだのに。
 これこそ最悪だ。
 どこに向かって叫んでいいのかわかんねえよ。
 ……クソが。 
 
 Chris Benoit the rabid wolverine !!

 ──凶獣、クリス・ベノワ!!
 彼はそう呼ばれていた。
 狂った獣。皮肉だよな。
 笑えない。ぜんぜん笑えない。
 最悪だ。

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