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 世の男児の多くがそうであるように、トミカとレゴが好きという個性こそ売り物という個人発信の世紀においてはいささか特徴なく育ってしまっていることを嘆いてもよさそうな情報をもとに、遠方の祖父母が息子に贈ってくれたプレゼントがこれだった。

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(レゴブロックの車。後ろのXbox界の不滅のヒーロー、マスターチーフは私の所有物)

 対象年齢七歳以上と書いているものを四歳に送ってくるところが、レゴに教育的なにかを感じているようで祖父母らしい。その意を汲んで、私は手を出さず、設計図の読みかただけを教えて本人に作らせた。

 レゴの設計図では、まず部品をさがし、その部品で小パーツを作るという工程が指示されている。小さなパーツをいくつも指示通りの数、作って、それを最終的に組み上げるという流れの繰り返しで完成を目指す。しかし四歳はこらえ性がない。ドアのようなパーツができると、車体にくっつけたがる。説明書の工程に添うならば、左右のドアができてから、座席を組み上げ、ドアをつける。当たり前だが、ドアを先につけると作業がとどこおる。

「設計図の通りにやりな」

 家電や組み立て家具も売る稼業の私なので、電話口で、部品がたりないだの、写真の形にならないなどというかたの相手で半日くらいが過ぎる毎日。そういうひとたちの99パーセントは、取扱説明書というものが存在していないかのようである。会議に会議を重ね、こういう手順でおこなえば猿でも作れますよと書いてくれている設計図を、行き詰まってもなお見ない。そんな大人にだけはなるなと、組み立てを勝手にはしょるなということを教えていたら、なるほどこれは小学校で必須になったというプラグラミングのそれだと気づいた。あれがそうなってこうなるからものごとは動く。レゴで好きなものを作る前に、パッケージ写真通りの車を作ることで、きっとカラーボックスの後ろの板が入らないとクレームの電話をかけるような大人にならないで済むのだとしたら、レゴは偉大だ。売れるわけである。

 それにしても。いまになってこれか、と思った。
 二十一世紀の子が組み立てているのは、二十世紀にマッスルカーと呼ばれた車。これはきっとアレだ。シリーズ新作が公開されるたびに、トイザらスでホットウィールが並んでいるのを見る。

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 映画『ワイルド・スピード』(原題『The Fast and the Furious』)。

 ミニカーが売れるのだからレゴも売れる。この黒いマッスルカーは作中でたびたび登場しては炎上大破もする車。二十一世紀に教育的レゴブロックとして新発売されたのも、映画からの知名度であろう。ただしそのことを、さだまさし好きの韓国ドラマ好きである祖父母が知っているとは思えない。息子はどうか。

「ワイルド・スピード、観たことある? この車も出てくるやつ」

 いっしょに観た記憶はないが、妻の録画フォルダに入れたことはある。妻と観ているかもしれないと思ったが、どうもぴんと来ないようだ。

 で、観た。

 いまレゴで作った車が暴走しているのだからウヒョーとなったのは当然だが、ダッジ・チャージャーが活躍するし、飛行機も出てくるということで息子を興奮させようとセレクトしたのが第七作『ワイルド・スピード SKY MISSION』だったのがいけなかった。

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 のっけからドウェイン・ジョンソンが出てくる。プロレス好きなので、強く紹介せずにはいられない。

「ロック様です。このひと、プロレスのチャンピオン」
「チャンピオンで警察なん?」

 フィクションとノンフィクションが並列いまだ。「チャンピオンで警察なん?」のフレーズは映画『バンブルビー』のジョン・シナを紹介したときも言っていた。警察と軍隊も並列らしい。けっきょく、観終わって、ロック様の立ち位置を説明することになり、なんどもチャンピオンベルトを獲っただけでなく、怪獣とも闘ったことがあると言ってしまったがために、それも観た。

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 『ランペイジ 巨獣大乱闘』。恐竜も好きなので、尻尾がハンマーのようになったワニ怪獣と、ロック様が闘うのに大興奮。

 しかし視聴後。特典映像で、ロック様が映画の原作について語り出してしまった。 

 『RAMPAGE』は、二十世紀のゲーセンでピコピコ動いていたゲーム。ファミコンやプレステでも出たが、当時でもマニアックな部類に入り、そうとうゲーセンに入り浸っていた私も、はっきりプレイしたかどうかを思い出すことができない。

「これやりたい!!」

 ロック様に勧められ、息子がわめくが、現状、家でさくっとどこかからダウンロードする手段はないし、あってもたぶんしないし。むかしのゲームなのだよとなだめることしかできず、いまだ彼は、やりたいのに、とグズっている。

 とある車のレゴから、めぐりめぐってひとりのレトロゲーム愛好者が生まれたという顛末。こういうことが、大人になって歯止めなくファミコンのカセットを集めるというようなことの発端になる。しかしそれも運命。少なくとも私の息子である以上、ロック様からランペイジへの接触は、避けて通れない事故だった。

 という長い前置きを踏まえて。 

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 レゴで作るマクラーレン・セナ、という商品があるのだが、それがXbox Oneのゲーム『Forza Horizon 4』に、まんま登場する。

 

 それを記念して今年の世界最大ゲームの祭典E3で、実物大のレゴ・マクラーレン・セナをマイクロソフトは展示してみせた。

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LEGO McLaren E3 - Google 検索

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 検索してみるとわかるが、それを興奮気味にニュースにしていたのは、ゲームニュース界隈よりも、車好きたちの界隈。

「ヒトが乗れるレゴのセナやってさ!」

 レゴのもレゴでないのも、まるで実写映像のように再現するXboxの代表レースゲームブランド『Forza』に、テレビゲームの進化に無頓着だったリアル車好きを結びつけるという、いやらしいマーケティング。車好きだからこそ、本物のマクラーレンのスポーツカーなど、指で触るのも躊躇するところを、もちろんXboxワールドでは、公道を走らせまくって映画『ワイルド・スピード』ばりに、壁に激突もさせまくって、超高級車をボコボコのベコベコにするのもまるで実写のごとく。違った嗜好が目覚めてしまった世界の車好きたちも、いたことでしょう。

 ひるがえっての私。
 ゲーマー寄り。
 それが、モーターショーのニュースを見て、その車のことをもっと知りたくて、オリジナルの配信動画をググった。

 トラックはみんな同じに見える。
 違うのがあってもいい。

 2019年11月21日、テスラがEV(電気自動車)ピックアップトラック『サイバートラック』を発表したとたん、同社の株が急落した。

 世界に向けて新車をライブ配信で発表したらブーイングが飛ぶとか、なかなか聞かない出来事である。

 公式サイトが日本版まである。

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Cybertruck | Tesla

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 すごいことだ。サイトから、すでに予約可能。コンセプトカーでもなければ、未来予想図でもなく、近日中に、これの実物を売って公道を走らせる気なのである。

 セガの『バーチャレーシング』をゲームセンターでプレイしていた私に、めまいをおぼえさせる。



 テレビゲームの映像が実車を映したかのように進化して、現実と仮想のつなぎめがあいまいになるという感覚は昨今、よく味あうものになったけれど。

 まさか、逆に現実の車が、それも実用車の極みであるトラックが、昭和のポリゴン・ゲームみたいなデザインで売りに出されたことによって、ボーダレスを感じようとは。てっきり近未来で、ヒトの乗れるドローン的なものがタクシーとして認可されるなどという的な、わかりやすく「きちゃったよ未来!」なニュースで感じるはずだったものを。

 そういう投資家が多かったのだろう。
 いやいや未来ってコレ?
 爆下げ。

 非常に気になる点として、どう見てもこのトラック、サイドミラーがない。アメリカの法律でも、それでは公道を走れないはず。

 今年の仮面ライダーのバイクがそうだ。

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『仮面ライダーゼロワンのオートバイ』のこと。

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 ゼロワンの乗るバイクは、近未来的デザインの実際に売っているバイクなのだが、番組ではそこからさらに特徴的なパーツを「取り外す」ことで、人工知能がテーマの未来コンセプト仮面ライダーにふさわしいそれに仕上げている。

 公道では走れない。

 後ろを見るミラーがなくても、電気自動車なのだし、カメラがついているということだろうか。最近では、そういう車が他にもあるが、それらの車種も、カメラはサイドミラー型に出っぱらせている。日本の国土交通省もすでにカメラを使用してミラーレスの車を売ることは容認しているが、そのカメラは従来のミラーの位置に取りつけなければならない。そうでないと車検を通らない。走ると違法。

 法律を変える気でいるのか。

 ミラーがなくても後ろが見えるのに、ミラーの位置に出っぱりがないとおかしいというのはおかしい、という議論が技術の進歩によってなされる。そういうことをいえば、このトラックが直線的なデザインなのは意識してポリゴン・ゲームのようにしたわけではなく、頑丈さを追求して、ボディを凹まないステンレス製にしたので、曲線加工が難しくて、やむなく折り曲げたデザインなのだそうだ。実用的な理由にもとづくのである。

 そういうものかもな、と考えたりする。

 なにかこう、見るからに未来的なデザインで埋め尽くされていく都市を想像しがちだが、ドラえもんの未来で、どこでもドアがあるのに車が飛んでいたり、人間が移動するためのチューブ通路が張り巡らされていたりするのはナンセンスである。

 むかしはなかった技術で、冬は発熱素材、夏は冷却素材の服を着る。そのうち、だれもが季節でデザインの変わらない全身タイツで生活するようになったら。ファッションなどというものは必要とされるだろうか。だれもがデジタルデバイスを持っている時代に、あえて腕時計をするのは、いまでも充分にファッションとしての意味しかなくなっている。

 技術が進みに進んで、シンプルも極まってきたら、それって結局、太古のむかしに、人間が裸で共同生活していたころの感覚にもどって、腰のラインが素敵とか、腕の太さが頼れるとか、もっと単純に、笑顔がすべてとか。

 そんなことになりそうな気もしてくる、カッコいいのかカッコよくないのかよくわからないけれど株価は下げた未来トラックを、私は嫌いではないなあ、と思いつつ。

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 『Forza Horizon 2 presents Fast & Furious』で疾走する私。Xbox360時代のソフトなので、実写のごとくとはいかないけれど。パッケージ販売されていないし、ダウンロード販売も現在では終了。映画『ワイルド・スピード』ファンなら、プレイしてみたいでしょう? 私はいまもプレイできる。

(と煽ったところで、だれかにダウンロード権を売ったり譲ったりはできない。二十世紀なら物理的に存在するゲームソフトを、どこのだれに高値で売りつけるかと画策できるところだが。これも技術の進歩でシンプルになった結果のひとつ。おもしろいようなおもしろくないような)

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「だってメディアがなくなるんでしょ」


『きらめけ!デンパッパ』
前山田 健一

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 デンパッパを観ている。

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『プリキュアになりたい』の話。

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 自己引用。

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※追陳

 「ひらめけ!デンキッキ」の最終回では、夢眠ねむおねえさんも「終わるんですか」という発言をしていて、最終回のそのときまで調整中であったことがうかがえたが。いまこれを書いているさいちゅうに、ニュースが届いた。

 「ひらめけ!デンキッキ」は「きらめけ!デンパッパ」にリニューアルするという。デンキッキの部分を変えてしまったら元ネタが不明になるだろうがという気がするが、勢いなのであろう。コンセプトは、立派な大人になりきれていないことに苦悩し眠ることができないダメな大人たちが見る教育テレビ、から、なんでもネガティブになってあきらめている大人たちに、ポジティブな大人になってもらうために様々なコトを教えていく…大人のための教育番組、となるそうで。

 おねえさんは、藤咲彩音。
 愛称ピンキーなのに、でんぱ組.incの青のひと。
 先代おねえさんやキュアスターには負けるが、気がつけばそこそこ古株。にしても、ダンス上手だがおしゃべり上手な印象ではないけれども、深夜にしゃべくるピンキーが観られるのか。いやたのしみである。様々なコトを教えてもらおう。

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 そして新番組がはじまって、いろいろ教えてもらって、その年の師走も近づいてきた11月。またぞろ番組が最終回を迎えるという話題が出たとき、ヒャダインが冒頭の発言。

 メディアが終わる。

 『きらめけ!デンパッパ』が最終回を迎えるのはそうなのだけれど、それは番組が終わるということではなくて、その番組を制作放送している『KawaiianTV』が終わるからだった。チャンネルの終了。テレビ局が終了。そりゃ番組はすべて最終回。ピンキーおねえさんは笑っていた。そりゃ笑うしかないわ。

 今話題のアイドルたちがすべてを見せすぎるチャンネル! といううたいで運営されていた『KawaiianTV』。見せすぎるというとなんかエロいが、要は、撮りっぱなしということだ。『きらめけ!デンパッパ』も収録番組なのに編集はいっさいなく、三十分撮ったものを三十分流すというスタイルだった。

 大丈夫なのか、とは思っていた。アイドル好きにはたまらないが、二十四時間、アイドルたちが入れ替わり立ち替わりずっと画面にいる。番組の司会進行は、アイドルではなく名の通った芸人が多い。『きらめけ!デンパッパ』ではココリコ田中おにいさんだった。

 毎週欠かさず観ている私が言うのもなんだが、とてつもない視聴者数であるわけがない。それなのに年末のバラエティー特番の顔と、武道館を埋め尽くすアイドルグループの一員が、だらだらしゃべっている。

 ギャラどうなってんのか。

 思っていたら、納得するような報道があった。株式会社カワイイアン・ティービーは吉本興業系列なのだが、その吉本さんが、芸人の闇営業がらみで会見を開き、わかりにくいことを言っているのを聞く。

 「契約書のない契約」

 あーでも、無数のお笑い芸人を育成するのに、最低賃金がどうたらやっているわけもなく、私も大阪育ちなので、ふつうに芸人というのは食うに困っている職業だと認識していた。ヨシモトともなれば、とりあえずそこに所属するのがステータスとなるので、無給で所属ということにしてくださいなんていうのはあるのだろう、などと受け止めながら。

 『KawaiianTV』のことが頭によぎった。よく出演しているNMB48は吉本興行系だ。そうでないアイドルだって、アイドル専門チャンネルに出演したくないはずはない。局から声をかけなくても、向こうから、ギャラなんて……いや、想像だが。

 契約書を作って契約するようになると、回せないってことで終了しちゃうのかなあ、と思っていたら。

 『KawaiianTV』は2019年に終わるが、2021年からBS放送に新規参入して『よしもとチャンネル(仮称)』をはじめる予定だそうである。

 『きらめけ!デンパッパ』の後継番組は、チャンネル名からしてありそうもない。さようなら眠れない夜をなぐさめてくれたアイドルたち。テレビ局が終わるとか。『アイアン・シェフ・アメリカ』を観ていたのに終わってしまったフーディーズTVを思い出す。

 たそがれていたら、別方向から衝撃のニュースが流れてきた。

 『Dlife』と『FOXスポーツ』も来年三月で終了。

 うちの息子が『カーズ』のキャラをおぼえたのは、『カーズ』の脇役総出演の『カーズ トゥーン/メーターの世界つくり話』で。

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『三つ子のタマシイ』の話。

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 『カーズ トゥーン/メーターの世界つくり話』はディスク化もされているが、我が家にあるのは『Dlife』で放送されたもの。『Dlife』はディズニー系。ディズニーの、買ったり借りたりすることはないが、放送されていれば録画する、というあたりの作品を『Dlife』には大量摂取させてもらった。

 そのディズニーも、BS放送で『ディズニー・チャンネル』をはじめる。本家の名を冠したチャンネルをはじめるのに、ディズニー色の強い『Dlife』も継続するのは戦略上好ましくないとの判断だろう。

 それはさておき、なぜ『Dlife』と『FOXスポーツ』の終了が同時に流れてくるのか。映画好きなら先刻承知の天変地異的今年の一大ニュース。

 ディズニーは、米国東部時間3月20日午前0時2分に21世紀フォックスの買収を完了した。

 20世紀フォックス映画もフォックススポーツもディズニーになった。

 で、『ディズニー・チャンネル』をはじめるから『FOXスポーツ』も終了という関連性である。なんだそりゃ。

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『宇宙探査艦オーヴィル』のこと。

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 去年、オーヴィルを観たのは『FOXスポーツ』。いまも放送中のセカンドシーズンを観ている。三月までには最終回を迎えるけれど『3』は、どうなる。

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『鮫サプリ』のこと。

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『ロボシャーク vs. ネイビーシールズ』を観たのも『FOXスポーツ』。『Dlife』が、買ったり借りたりすることはないが、放送されていれば録画する、というディズニー作品の宝庫だったように、『FOXスポーツ』は、B級ホラーやアクション、SF映画の宝庫だった。

 私は野球をまったく観ないので『FOXスポーツ』で観るのは総合格闘技と映画ばかりだった。プロレス好きにはこれも今年の大ニュースだった、世界最大のプロレス団体WWEの放送がアメリカでは『FOX Sports』ではじまったのだが、もちろん『ディズニー・チャンネル』で『ロボシャーク vs. ネイビーシールズ』の放送はたぶんないし、プロレスも放送されないだろう。

 日本の『FOXスポーツ』は終わる。
 そしてディズニーになる。
 ディズニーにスポーツはないのに。

 テレビ局が終了しまくる時代。
 ディズニーランドに『スター・ウォーズ』のアトラクションが入って歓ぶひともいれば、テレビの前で、あたりまえの日常が破壊されて、絶句する私もいる。正直、ディズニー大好きっ子なわけではないから、買ってはいらないところを切り捨てる近ごろのディズニー無双ぶりは『Dlife』で観た、物理法則を無視してケタケタ笑うあのネズミの最新バージョンに似て、苦笑いしたくなるものを感じはじめている。

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「もうここに、蜥蜴はいないから」
 金星が言った。

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嬉野 君 『金星特急』

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 前回、徒然ていて、金星のことを想った。

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『ベビーパウダーの危険性』の話。

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 かつて広い海があったが、すべて蒸発し、多量の二酸化炭素と温室効果ガスに満ち満ちた結果、温暖化の果て、灼熱の惑星と化した。

 年々、暑くなっていつか、

「この調子だと正月には暑すぎて外歩けなくなるねえ」

 という落語が現実化しそうな地球の未来予想図ではない。

 金星。

 地球と同じ大きさの、たぶんむかしには水が豊富で、もしかするとちょっとした生き物、そこまで生物らしい生物だったかは定かではないにしても、トカゲくらいは、いてもおかしくはない惑星だったはずの金星。

 地球の悪魔の双子と呼ばれている。

 いや、いた。
 いま、こうなってみれば、その灼熱地獄の様相は、まぎれもなくこの惑星の未来。だとしたら家系図の悪なる異端ではなく、たんに早く生まれただけのお兄ちゃんだ。というか、金星がああなってしまったのは、地球よりも熱い太陽に近い位置に浮かんでいたからだという説が濃厚なので、棲んでいる動物風情がじゃんじゃか温室効果ガスでみずからの星を覆ったあげくの温暖化を招いているどっちが悪魔だという話である。

 金星にいちゃんは不幸だった。
 ぼくらは自業自得。

 そんななか、近ごろ各国が、あいついで金星探査計画を発表している。この先十年は、金星における新発見パレードになるというくらい、次々に船が行く。

 かの有名なアメリカ航空宇宙局にいたっては、すでに気温500度で地球における水深1000メートル相当の大気圧なうえ金属も溶かす毒が漂うとされる金星で、二ヶ月以上も動き続けられる探査ロボを開発済みだそうだ。

(そんな煉獄でどうやってコンピュータが耐えられるのか謎だが、開発者いわく、珪素で回路が組まれているという。珪素マイコン。謎は解明されないが、ともかくすでに完成しているのだ。地球の温暖化が極まっても想像もつかないテクノロジーによって人類はこの場所に生き続けられるのではないかという夢まで見てしまう)

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『珪素弁当』のこと。

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 月と火星に人類が行って、あわよくば棲もうというのは、もはや既定路線。その先の話として、移住ということを検討しはじめたとき、大きな問題がある。

 月は近いが狭い。火星は遠いうえにこれも狭い。

 どちらも地球の半分ほどの大きさである。そこでいくと、金星は双子。そして、太陽系における隣の惑星。

 皮算用的に発言してみれば、もしも金星のテラフォーミングが叶ったならば、地球二倍。それもただ土地が二倍の広さになるだけではなく、まったく手つかずの土地である。アダムとイブになりたくないかと問えば、移住希望者は山といるだろう。金星特急満員御礼。さっそくジャガイモを植えてセックスをしよう。きれいな土地さえあれば、人類はなんどでも繁殖する。

 というような想像をたのしんでいるうち、いくつかの単語が不穏に頭の隅でまたたくことに気づく。

 超高温。超高圧力。
 その惑星をヒトの棲めるように温度を下げて圧を抜いて……

 ダイヤモンド。

 いや、正確ではない。ダイヤモンドは、地球の奥深くで熱と圧力によって生まれるとはいえ、地球標準での話だ。宇宙標準は違う。

 地球で生まれる宝石類は、地球のマグマが生み出せる範囲で、それはルビーだ、それはエメラルドだと名がつけられているわけだが。

 灼熱圧の地獄の双子を、地球の歴史上ありえなかった人為的急速冷却テラフォーム。

 移住した人々が、洞窟を掘ろうと試みたら、ゴロゴロとキラキラした石が出てくるに違いない。地球に報告もするだろう。おっそろしく硬い透明な岩が邪魔で、開拓作業が遅々として……その報告に、気づく者は気づく。

「ダイヤモンドの……岩壁?」

 いやきっと地球のそれよりも透明度が高く結晶の揃った、どころか。きっと掘り進めれば、地球では誕生しえない高圧縮からの開放によるブラックホールじみてまわりの色彩を吸収する黒いダイヤだって出てくる。

 金星特急の乗務員に、現地人から石を回収してくるよう、金封をそっとわたす連中が現れるだろう。

 金星人にとっては、地球の貨幣も、どんなにきれいな宝石も、食べられないので意味がない。だが、ビスコ缶と硬くて透明だったりカラフルだったりする石を、なんども金星特急乗務員と交換する。

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 性善説を信じたいけれど、金星でのワイルドライフを選択したヒトのなかにも、そういうのはたぶん、いる。

「おいこらテメ、この石、地球に帰ってビスコ缶何個と交換する」

 冷めたとはいえ岩の惑星で子だくさんの世話をしながら穴を掘る新人類に、金星特急乗務員の締められる首は折れかける。

 ビスコ缶換算では天文学的数字になり、実のところ小指の先ほどのブラックホールダイヤモンド(という名称で地球では流通しはじめた)で、ビルが建つほどの価値があるのだと知る。

 知れたら、ビスコ缶と交換する金星人はいなくなる。

 地球へ帰還しない金星特急が現れる。

 囚われた金星特急乗務員からの通信。

「次の便でヒトではなく、金星にない物資を送れ」

 それに見あった金星宝石をわたすと確約。

 二倍の地球。二倍の資源。二倍の文明と、二倍の兵器と、二倍どころではない冷戦が幕を開ける。

 地球では生まれない宝石を満載する惑星へ、地球人は攻め込まずに、どれだけのあいだ耐えられるだろう。

 えーでもそれって、もとをただせば同じ地球人同士が、となりあった星で戦争をはじめるってこと? そんなバカな。なかよくして市場開放すれば、金星宝石も適正価格に落ちついて、金星のひとたちも豊かになって、だれもが幸せじゃない。そうしない理由がある?

 理由はよくわからないけど、地球でもみんな平等にしようっていうムーブメントはなんども起こったんだけど、反対するひとのほうが多いんだよね。まあ、だって、みんなが同じだけの宝石を持ってるなら、宝石はその時点で宝石とは呼べなくなるとも言えるし。となりのひとも持っている石を首に飾るなんて重いだけだし。