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LinseedOil01

ペインティングオイル。
ざっくりした名前だが、おもにリンシードオイルとペトロールの混合物。
言い換えると、亜麻仁油と石油。
まぎれもなく臭い。
おまけにシミになる。
そんなものを瓶詰めて、だれに売るかといえば、絵描きだ。
油彩画に必須。
いろいろな油を混ぜ、自分好みにするひとも多いが、面倒なのでだれもが調合済み油を一本は持っている。
これは松田油絵具さんの。
東京の老舗である。
生まれも育ちも関西な私が、自分でこれを買ったおぼえはない。
しかし私の道具箱に入っている。
だれかにもらったのであろう。
こだわるひとは、気に入らんとひとにあげ、気に入ってもひとにあげたりする。
こだわらない私はなんでももらう。
いや、それにしても。
こいつは完全に変色している。
もとは薄い金色透明な感じのはず。
それにデザインがおかしい。
ググっても出てこない。
私が生まれる前のもののようだ。
そうしてみると。
私が頂戴したときにはすでに、変色していた可能性が高い。あげるほうももらうほうもヘンだ。と、考えてみると。
この瓶のたたずまい……
私は、すごく好きである。
年配のかたのアトリエで、どう見ても使っていない長年放置されて味わい深い見た目。
この外見そのものに惹かれてしまい。
もらった……?
ちゃんとことわったのだろうか。
黙って持ってきたのでは?
あのひとのものかも……
という心当たりは、なくもない。
まったくおぼえていないというのも、自分で記憶を消したのではないのか。
……などと疑って。
好きな見た目なのだけれど、
道具箱に入れてある。
使えない。使わない。
けれど油絵は腐らない。
私が朽ちても。
正体不明のいまは私の所有物。
このペインティングオイルは。

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 変色しているし、あらためて一枚書き上げようかというには残量も少ないし。使い道がないということもあって棚に飾ってあったのだけれども。

 落款をしるす。

Rakkan01

 かすれている。
 印泥である。
 ラップで表面を覆ってはいるが、この激烈暑。カラッカラだ。ローションがないとキツい。印泥のローションってなんだ。たいていの場合にそれで間に合うパラフィンオイルか。いわゆるベビーローションか。

 ググってみると。
 印泥足し油、なんていうものが密林でも売っている。
 20mlで千円超。
 高価っ高価高価高価高価高価高価高価高価高価高価高価っっ!!
 と千手観音パンチでも放ってしまいそうなほど高価い。

 で、棚に目がいく。
 残り少ないが、50mlくらいはあるだろう。

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○いじりかた

①印泥をぺろんと容器から剥がしてボールに入れます。
②ペインティングオイルを小さじ1くわえます。

Rakkan02

③硬化具合によりますができるようなら割り箸などでこねます。
④たいていの場合そんなものでやっていてはラチがあかないのですが、すり鉢を使ったりすると細切れにした人体を処理したかのような痕跡が鉢にもすりこぎにもついてしまうので、ラップを重ねてその内部に入れ、指でこねるのがよいでしょう。
⑤容器に戻します。

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 そしてもういちど捺す。

Rakkan03

 まあよいのではないでしょうか。
 ちなみに「匠」の印です。流通しているなにかにこれが捺されていたら、これまでは間違いなく私の制作品でしたが、今回、印影をこの記事にアップしたせいで贋作が世に出回ることが懸念されます。ご購入のさいには、今回の写真の印泥かすれ具合と見比べ、最用心されますこと推奨いたします。

B001TI91VQ

 ※私の環境では、これをなんどもやっていて問題は起きていないのですが、ふつうに考えて、ペインティングオイルは油絵具をキャンバスに固着させるのに使うものなので、モノによって樹脂成分の量が多かったりすると印泥そのものを硬化させる危険性がともなうのではと考えます。新たに購入されるならば、純粋に揮発する油成分のみなテレピン油がよいのではないかと。なんにでも使えるベビーオイルは揮発性に乏しいので、発色はいいかもしれませんが捺印がいつまで経っても乾かずにかすれる、というようなことになるのではないかと危惧します。試してはいないんですけれども。自己責任でどうぞ。



 揺れた、あの日。

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『2018年06月18日午前07時58分、大阪』のこと。

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 なにげに、外付けハードディスクが倒れていたということをさらっと書いていたのですが、その時点ではふつうに読み込めていたので、ああよかったと思っていたら。

 転倒はしなかったパソコンの内蔵ハードディスクのひとつが、激しい異音を発しはじめ、読み込めないファイルが出はじめて……

 あれです。
 あのとき剥いた娘。

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『バッファロー製外付けハードディスクドライブを分解する』のこと。

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 USB接続部のせいだったんだ内蔵に転生させたらちゃんと動く、と書いてから、けっきょく四ヶ月後にこの事態なので、やっぱり中身も出来のいい個体ではなかったのかもしれない。

 とりあえず、動いているうちにデータを避難させるか、と、USB外付けハードディスクを持って来て、コピーをはじめた。

 ていうか、ガリガリガリガリ唸ってWindowsに認識されなくなったダメな娘。
 こんなときのための大修館書店サマの英語教育用語辞典。

4469245399

 ほどよい分厚さで、ガリガリっ娘ハードディスクを立てて置くのに便利。なぜ立てるのか。かつてもっとひんぱんにハードディスクが壊れていた太古の二十世紀に流布された格言である。

「認識されないハードディスクの置く方向を変えたら認識される(こともある)」

 絶対ではないが、経験上もガリガリ齧るような奇行に陥ったどうしようもないのは、裏返せばディスクに傷が入ったなどというよりも、読み込む側の駆動部分が動けなくなっている可能性が高く、だいたいにおいて延々と回転するような装置というのは工場の旋盤機でも趣味のオートバイでも、いかに回転摩耗する部分へと絶えずオイルをかけ続けられるかという構造が製品寿命に直結するのに、ハードディスクにはオイルを注入する穴がない。2サイクルオイルも4サイクルオイルも使えないし、密閉されているからモリブデングリスを塗り込んでやることもできない。

 それでよく出血しないものだと思う。ハードディスクの寿命は、軽く数万時間。だれか潤滑油というものがこの世に存在することを、このハードプレイヤーに教えてあげたらいいのに。

HDDcrash1801

 というわけで、右のがガリガリくん。立てて置いてやったら静かになった。「痛いっ」「じゃあちょっと向きを変えてみようか」「うん……だいぶラク」みたいなことだが、PC内部に縦向きでHDDを設置するのは、できなくはないが場所もとって邪魔である。これは一時的な措置として、データの離脱をはからねば。

 で、前述の、地震で倒れていたけれどデータの読み込みになんら問題はなかった外付けUSBハードディスクにと、データ民族大移動をはじめた。

 その途中で。
 コピペの真っ最中にデスよ。

 なんとまあ、受け側の位置が特定できないとかいうメッセージがモニタに表示。送り側が不調なのはわかっている。わかっているからデータを逃がしているのだ。それが、そっちじゃなくて、と。

 見てみると、本当に外付けハードディスクのパイロットランプが点いていない。再起動。電源交換。ケーブル交換。

 直らず。
 認識されず。

 ……とりあえず叫んだ。

「こんな奇跡ってある!?」

 薄く笑って。こういう事態を本来は奇跡と表現するのは間違っているのかもしれないけれど。壊れかけのディスクをコピーしようとしたディスクがコピー中に壊れる。そんな偶然を目にした神々しさは確かにあった。笑けてきた。きっと紅蓮の竜が目の前に舞い降りて火を吐いて翼をひろげて背に乗れと言ったりしたら、そういう顔になるのかも。ありえるかこんなんっ?

 いや。偶然て。
 そんなわけこそあるかっ。

 なにのどこがどうなっているのかはわからないが、これはもうおそらくもなにも、地震と大雨のどちらもの要因が重なってのことに違いない。

 ちなみに、これは角度や向きを変えても認識はされず。

 やむなく、さっきの写真にもどる。
 外付けUSBハードディスクは、ガワを剥いてやると、ほんま高確率で中身は健全に動く。

 USB接続部のせいだったんだ内蔵に転生させたらちゃんと動く、と書いてから、けっきょく四ヶ月後にこの事態なので、やっぱり中身も出来のいい個体ではなかったのかもしれない。

 と、さっき言った口でそれを言うかというところだが。
 ともかく動くは動くので、USBハードディスクとして手に入れたのに結果的には裸に剥いてご奉仕していただくみなさんによっての大移動の続き。

 どうせまた、すぐ壊れるんでしょ?

 いや、今回の竜は、実はちょっと事情が異なる。
 元ひかりTV専用機。



 いまでは電子書籍やゲームまでも配信と手広いひかりTVのセットトップボックスが、単純にテレビを録画できるというだけの機能を実装した黎明期、接続したUSBハードディスクと連動して電源が切れるという当たり前の機能が実装されず、それでも録画機能は使いたかった私がどうしたかといえば、それしか選択肢がなかったので。

 ハードディスクの電源は二十四時間入れっぱなしだった。

 途中、地震だってあったでしょうに。
 ちなみに、今回ガリガリ言い出したのは一万時間を越えたところで症状が出ました。むかしから一万時間を越えたら、といわれてはいるものの昔話めいてきて最近は故障率も少なくもっと長く使える個体が多い。しかしそれにつけても地震です。その直後ということを考えれば、一万時間をなんとか越えたのだから、ありがとうさようならお世話になったねとキスをしてお別れするべきでしょう。

 さて一方。
 USBハードディスクとしては二十四時間電源投入で、そこを退いてからは、PCデータのバックアップ用として、年になんどか電源投入という使い方をされてきた、一万時間越えでガリガリくんからデータを移動されし新しい個体。新しいと書いているが、ひかりTVに録画機能が実装されたなんていうのは、もう平成になっていたっけねえというようなご老体でもある。

 その健康診断結果。

HDDcrash1802

 電源投入回数49回にして使用が44677時間。まったくもって健康。

 平均値なんて実体からかけ離れているにしても、ざっと計算で、いちど電源を入れたら一ヶ月と十日ほどは高速摩擦回転を休まず続け、累計にして五年以上の月日。

 これもまたむかしからいわれることですが。
 電源を入れたり切ったりが、寿命を縮めるのだと。
 個体差もあるでしょうけれども。

 痛くない角度で続ける行為に負荷はない。

 そんなことを思いました。
 なにげにこれもまた。
 愛について、語っているのかもしれません。


 揺れた、あの日。

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『2018年06月18日午前07時58分、大阪』のこと。

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 書斎のタワーPCと同時に、そりゃもう仕方ねえな、と私が止まった電車のなかで想っていたのは、オートバイだった。サイドスタンドで、斜めに傾いた恰好でガレージに停めてある。満員電車が脱線しようかという揺れで、倒れないわけがない。

 無事帰って、割れた皿も掃除して。パソコンも倒れていなくて大丈夫で、家のなかが落ちついたところで、そやつを見に行った。

 車体は、倒れていなかった。
 奇跡だ。

 だが、なにかおかしい。
 見慣れたフォルムに違和感がある。
 愛するもののモノの些細な変化は、いつも触れたりもしているわけだから、気づくものだ。

winker02

 方向指示器が、片方なかった。
 落ちていたから拾った。
 我が愛車のフロントウインカーはギボシ端子でつないであるだけだから、引っこ抜くと取れる。

 そんなことがあろうか。
 バイク本体は倒れず立っているのに、地震でウインカーだけが折れる。

 いや、ヒビには気づいていた。
 愛するもののモノの変化には気づくものだから。

 そしてカワサキを毒づいていた。
 ググってみると、無残な画像の羅列。カワサキ車において、ウインカー折れた、は、ちょっと長く乗っていたらデフォな出来事であるらしい。

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カワサキ ウインカー 折れた - Google 検索

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 金属を仕込めばいいだけのことを、なぜに樹脂だけで支えようとするのか。これはいわゆるソニータイマーのような思惑を含んだ設計なのか。しかし十年越えてあちこち直しながら乗っているライダーが、ウインカーが折れたくらいで車体を買い換えたりするものか。

 カワサキの意図はわからない。けれど今日もどこかでウインカーは折れている。直さなければ法律的にも乗り続けることができない。

winker01

 樹脂部分をすべて取り除き、手持ちのボルトとナット、ステーで留めた。純正部品がボルト留めしてあった穴だけで、いちおう固定されているが、万が一にも走行中に落ちないように、結束バンドでフロントフォークにも留めておく。見た目に難があるが、そもそも十年越えて一万キロも走っていない愛車だし、タンクも凹んでいるし、いまさら恰好がどうとかいうことは気にしない。むしろ新しい傷ができた素敵、という中二病患者かデスマッチレスラーのような思考になっている。

 そういうわけで、残り三つのウインカーも、見た目を気にせず、パテで固めてみた。そのうえで蹴ってみた。

 折れた。

winker03

 外側をパテでがっちがちに固めてから軽く愛撫したのだが、なかの樹脂がズタボロなので、簡単に折れる。こんな状態でパテだ接着剤だというのは、もはや非現実的だ。そして、やっかいなことにリアウインカーは、本体に直接ボルト留めしてあるので、フロントのようなステーで出して留めるという技が使えない。

 悩んだあげく、もっとも簡単な方策をとる。
 リアは新品に取り替える。
 二個で千円ちょっとの輸入品。

B06XRF6GPR

 純正が12V15W球。これに対し、買ってきたのは12V10W/5W。出ている線はそれゆえに黒、赤、黄、の三色。

winker04

 10W+5Wで15Wなので、まあ問題はなかろうと赤、黄、をぶった切って、よじってつないで、アマゾンのレビューで悪評高いハンダづけされていない黒アース線は、使わないでそのまま。

winker05

 この状態で問題なく点いたから、圧着端子に変えるのも面倒で、ビニールテープでぐるっぐる巻きにして、雨に濡れない車内へ格納。

 完成。

winker06

 さすが、新品は収まりがよい。

(商品画像ではバードケージの目が水平なのに、取りつけ後は垂直になっているのは、ちょっと変化をつけたい中二病発作ではなく、こうするとカバーのネジが上にくるので、動作確認のあいだはこうしていただけ。動作確認後はもとに戻しました。そういえばこの商品、ちゃんとカバーが閉まらないというレビューがあるが、取りつけていて気づいたのは、両切りの中空ボルトが使ってあって、車体取り付け時に気をつけないと方向指示器の内部にボルトが出っ張ってきて、それが干渉してちゃんとカバーが閉まらなくなるということ。ボルト引っこめてみたらちゃんと閉まるんじゃなかろうか。うちのは問題なかった)

 ところであの地震のしばし後、そういうこともあった。

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・昼すぎに電車が止まるというのであわてて店閉めて帰ってきた。先月も地震で電車に閉じ込められたのち歩いて帰ったし。星の数ほどのひとが細い金属のレールで大移動して滞りなく営めている毎日なのだと身に染みる。在来線が飛行機みたいに月に何度も全線運行停止とか、地球、住みにくくなった。

twitter / Yoshinogi

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 大阪、大雨。家のなかにいても、湿気がひどすぎてコピー用紙がプリンターで詰まって仕事にならんといった大気がすべて飽和状態に水っぽい星。雨ざらしにしているわけではないものの、特に今回のフロントウインカーは、樹脂部品をぜんぶ取り除いてボルトで留めるというところまでは作業したが、シールをしていない。いや、なにか不具合があったとき、またバラすのにコーキングなど打ったら面倒だから、ちゃんと使えるよということを確認してから詰めようかと考えていた。ところに、激しい雨。

 実のところ、あの雨からまだ乗っていない。ウインカー内部に水が溜まっていたら、エンジンかけた途端にバルブがポンッ、ということもありうるだろう。

 アナログなバイクは融通が利く。裏返せば生き物のように。世話をしないと、死んでしまう。

 最近、ニュースを見て思う。自動車の自動運転化が、本気で実現しかかっている。電車のように自家用車に乗る時代が来て、デジタルパネルで目的地を入力したら寝ていても到着するから、過疎の解消にもなるのではないかなどと言われている。

 道路を、整然とゆく自動運転車たち。

 そりゃ未来だが。その道路で、手動運転のアナログな乗り物は、事故の原因にしかならない。趣味で走る車やバイクは、レース場でだけ走行が許されるということにならざるをえないのでは、と。そうなったとき、きっと多くのライダーは、実車をガレージで錆びないようにメンテナンスし続けながら、デジタルスキャンしたゴーストの愛車でバーチャルリアリティーなテレビゲームをプレイするのが、バイクに乗るという実際の行動になる。

 移動には使えなくなったガレージの実車は、それでも愛され続ける存在でいられるだろうか。

 私の、我々の愛が試されているのだ。
 これがカワサキの意図か。
 折れたウインカーの洗礼を、私は乗り越えた。

 まだ愛している。
 私は私が誇らしい。