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Taiwan23

 先月、日本で最新号に載っていた『魔人探偵 脳噛ネウロ』が表紙におどりながら、声優特集は山口勝平というありえなさ。
 なにかが微妙に違うが、作品のすべては無修正に日本のまま、セリフも直訳、台湾少年ジャンプです(中国全土で読まれているわけではなく、集英社から正式にライセンス許可を受けた「台湾中文版」である)。コンビニで買ってはみたものの、あまりに日本集英社版の完全コピーなので、ネタにするところがありません(笑)。とりあえずラインナップを書き出してみようか。

P001 死神
P025 光速蒙面侠
P045 魔人偵探脳噛涅羅
P089 火影忍者
P107 ONE PIECE 航海王
P127 HITMAN REBORN! 家庭教師
P145 出包王女
P165 銀魂
P185 魔法零蚤
P203 D.GRAY-MAN 駆魔少年
P219 魔法律事務所
休  狩×人

 特筆すべきは、目次にページ数「休」と書いて『HUNTER×HUNTER』が載っていること。作者取材のため、などというような、赤子でもわかるような愚堕嘘を小さい文字で書いたりしません。富樫義博先生は今号「休」。なんか事情はしらないけれど休んでいるんだよ、潔い。あと『魔人偵探』は誤植ではない。「偵探」って、ローマ字表記も併記してあるんだがそれは「TANTEI」と書いてある、意味がわからん。『エム×ゼロ』が魔法力ゼロのノミだと書かれているのは実に物語の内容がわかりやすくて良い直訳です。
 そういう意味では『To LOVEる』が完璧に意訳な感じの『出包王女』となっているのは、特別あつかいな感じ。ローマ字読みに引っかけたタイトルなので、英語を自然と耳にする台湾では逆にダジャレだってことが伝えにくいのかもしれません。中文翻訳ソフトにつっこんでみる。「出て包む王女」……まんまだ……もっとセクシャルで肉感的な意味を期待したのに、出てきて包む王女さま。まあ、なにかと主人公、結城梨斗に抱きつく宇宙王女ララ・サタリン・デビルークの奔放さが物語の中心でありすべてなので間違っちゃいないが。
 あ、ところで目次の作者コメントまできちんと翻訳してありますよ完コピ台湾ジャンプ。えらい。
 そんな直訳完コピ主義な、でも雑誌名は『宝島少年』。
 『出包王女』のワンシーン。
 まずは日本集英社版の同シーン。

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 そして台湾中文版。

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(上:集英社週刊少年ジャンプ2007/50号 『to LOVEる -とらぶる-』76話
 下:東立出版社有限公司週刊宝島少年西元1992/14号 『出包王女』
 ともに 漫画:矢吹健太郎 脚本:長谷川沙喜)

 読みにくかろうが、美柑たんが驚く姿にカブっている梨斗の太字セリフはこうである。

「鯛魚焼冨主食?」

 鯛魚焼……中文が読めなくたって、これは「焼いた魚の鯛」という意味であろう。そういえば、台湾のどの屋台村にも日本でいうところの「たいやき屋」はなかった(いわゆるカステラ焼き、まるくて甘いのを売っている店はたくさんあるのだが、そもそもあんこの入った焼き菓子というのをまったく売っていない)。となれば台湾の人たちにとっての鯛魚焼とはまさしく焼いた魚であるところの鯛であるに違いなく、このシーンにいたっては、暗殺少女「金色の闇」通称ヤミヤミの手にたいやきが握られているわけでもないので、まったくもってそう受けとめるのだろう。

「焼き魚の鯛が主食?」

 ……主食でもおかしくはないが。
 じっさい我が家の主食は鶏肉である。業務スーパーの輸入冷凍1キロもも肉パックが、このところの値上げ続きでついに千円台に乗ろうとしているのは、家計にとって非常に頭の痛いところだ。

 とはいえ、萌えキャラに焼き魚はない。
 ヤミと同じくたいやきを主食にする萌えキャラといえば『Kanon』の月宮あゆが代表格だが、彼女の抱える紙袋の中身があんこの詰まったたいやきではなく焼き魚の鯛であり、あまつさえそれを口にくわえて食い逃げしているのだとしたら、そんな女を口説く気になるかというところである。

taiwan

 焼いた鯛をあなたも食べますかと差し出すようなキャラにときめいてあげく抱いてしまうことなどできようか。いやまあ、できないことはないだろうが。魚臭いじゃないか。歯は、みがいてほしい。

 いつだったか、テレビで「こんな国でも日本アニメが放送されている」という特集をやっていて、国名は忘れたけれど、熱帯の国で名作『めぞん一刻』が放映されているというのを取材していた。
 ほおほお、パチンコ屋で現実逃避する浪人生の悲哀がよその国の人たちにも伝わるものかねと興味深く見ていたのだけれど、驚いたのは彼らが惣一郎さんのお墓参りのシーンを宗教上の儀式だと理解していたこと以上に、管理人さんの部屋にある「こたつ」を、それもまたなんらかの宗教関係のグッズだと認識していたことだった。

 年中半そでで暮らせる国にコタツはない。
 ないから彼らは、一ノ瀬さんと管理人さんが深刻な顔で語ったりする、膝をつき合わせて、その膝を布で覆って、湯飲みを置いたりして、ときどきそっと中に腕を差し込んでどうやら手を合わせているのかもぞもぞ動いたりする、その台を、降霊台か占い師のテーブルのようなものと勝手に解釈しているのであった。
 でも、それは、番組のスタッフが、

「きみたちはこのアイテムがなにかをわかって観ているのか?」

 と訊ねたから。
 訊かれたけれどだれもそのテーブルがコタツだと知らなかったので、彼らの想像力が暴走しただけなのである。つまり、ふだん彼らが『めぞん一刻』を視聴するとき、そんな謎アイテムのことなんていちいち気にせず、ドラマに没頭できているということなのだ。

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 それは私が『スタートレック』を観て、いちいち、あの壁の不思議な形状の機械は、いったいなんの役に立つものだろう、と悩んでドラマに集中できなくなったりはしないのと同じことなんだろう。

「ヤミちゃん鯛焼いて主食にしてんの?」

 台湾でも若者は魚を食べなくなっているというし、驚きは不自然ではない。
 たいやきを知らなくても、ド直訳のセリフを、台湾読者は別段気にもせず読み飛ばし、次のページからはじまるヤミヤミをふくめた『To LOVEる』オールスターズの入浴シーンに萌え萌えなのに違いない。ちなみに、湯煙のすきまからはみ出る少女たちの柔肉の割合は、日本版と同じでした。いっさい規制なし。完全コピーである。スキャン画像を見ていただければわかるが、いっそ台湾ジャンプのほうが良い紙をつかっているため、コミック化される前の段階では、ずっとクリアに原画に忠実な金色の闇の太もものまるみを鑑賞できたりする。まあそのぶん値段が高いんですけど(85元=約300円。日本ジャンプだって240円だが、なにせ載っている作品数が倍近い。厳選された作品を良質の紙で読める対価として受け入れられているんでしょうね。コンビニではきっちり包装された立ち読み禁止のビニ本あつかいでした)。

 しかし、なにげにこういう直訳から脳内補完で文化が形成され、いつのまにやら台湾のオタク少年のあいだでだけ焼き魚を主食にするコ萌え、などという価値観ができあがったりするとおもしろい。意外に洋楽のダンスミュージックが空耳のまま日本人に口ずさまれてそのまま流行るというようなことはありがちなので、ありえないことでもないと思うんですが。

taiwan 

 金色の闇、その唇で主食に焼いた鯛喰っているなら、キスの前に歯は、みがいて欲しいですが、やっぱり。あ、骨、前歯にはさまっているよとってあげよう、とか……いやまあ、ないこともないか……萌えなんて作られるものだからな。

 しかしそれにしても、中国大陸で『DEATH NOTE』の人気というかそれに影響されたイタい事件が続発しているとは聞いていたが、日本でもエルは人気だけれどアニメでそれを演じた山口勝平が少年ジャンプで特集されたということはまったくなかった……にもかかわらず。
 完コピ信条の台湾ジャンプには、この独自の特集記事。
 ここでも『DEATH NOTE』。
 中国では出版にまで規制が入った禁書扱いというから、中華系オタクたちはネット経由でアニメ化『DEATH NOTE』を日本語で観たりしたのだろう。少女たちはキラ派とL派に別れ、じっさいに友達を殺してしまうくらいにハマりきった彼女たちは、がんばれLサマ、いやもうナカのヒトまで愛してる山口勝平サマでしょうだったら日本ジャンプを完コピしている宝島少年で特集しないってなんなのよ殺してヤる。

 という流れなんですかね。
 怖いなあ。

taiwan

(引用に関して、問題あればご連絡ください。ただちに修正いたします。
文章と違ってマンガは引用の定義がきっちり定まっていないので、
つかいにくいです。だいぶ著作権に関して知識を増やしましたが、
知れば知るほどあいまい基準。たぶん二度とやりません)

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『台湾旅行記・総統選に旗を振る』のこと。
『台湾旅行記・忠烈祠で笑みを見た』のこと。
『台湾旅行記・担仔麺と生き人形の夜』のこと。
『台湾旅行記・非情なるジブリの町』のこと。
『台湾旅行記・奇天烈マスクをさがして』のこと。
『台湾旅行記・アミ族流接客術の極意』のこと。
『台湾旅行記・そしてピザを焼く』のこと。
『台湾旅行記・犬食レストラン』のこと。