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 ええと、この数日『恋愛花電-A.F.L.-』と吉秒匠をググってきてくださった多くのみなさまがた。年末のお忙しいなか、かように偏った志向の我が『とかげの月』へご足労のほど、感謝至極。とてつもなくありがたく、そして、いまとなってググればこの作品をWという雑誌向けに書いたこれがヒットするわけでして。

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『恋愛花電-A.F.L.-』の話。

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 いいわけがましくひとこと。
 いわずもがなですが、Wでは落選済みです。
 みなさんが気にかけてくださっている、その『恋愛花電-A.F.L.-』は、またしても大増量加筆バージョン。「ダッチワイフを愛する男という種族の話」のくだりも「まぶたの裏に入った洗顔料のスクラブが腐って炎症した少女のポスターにまつわる話」などの枚数を削るためにカットした毒舌気味のエピソードもすべて差し戻し、あまつさえラストシーンまでまったく別物。

 それにしても。
 昨年も同じ時期に、その某編集部の担当者様とメールやりとりして作品のタイトルが実はそうではなく(昨年は私の記述ミスでした。今年は違うはず)、という話をしていたのですが、今回もウェブ上の選考結果ではこの作品のタイトルが『恋愛花電ーA.F.Lー』になっているのですね。しかし、みなさまが検索してくださっているのは『恋愛花電-A.F.L.-』──ええ、『L』の後ろにドットがついているかどうかの違いなのですが(ついでに言えば長音記号もそこに使うのおかしいと思うのですが)。
 ということは、みなさま選考結果を見て、それをコピペっているわけではない、と。
 ということは、別の場所できちんとドット付きの正しいタイトルでもって、この作品について語ってくださっているみなさまがいらっしゃるということなのでしょう。
 ありがとうございます。
 褒めるなりけなすなり、好きに料理してください。
 たっぷり『徒然』読んでくださっている足跡もいっぱいで、長いことサイトやってる冥利に尽きます。

 それにしても。
 十年以上もやってきたWでの結果に対する反響と比べ、たった二年のその結果によってこれほどまでにググられるものなのかと……複雑です。逆にいえば、扱いがどうだろうと、原稿料が安かろうと、一部の大御所作以外は売れなかろうと、新人賞の賞金が安いのにもう何年も大賞が出ていなかろうと、読売新聞で「中小出版社の編集者のこだわり」を褒められながら褒められているのがよしながふみで褒めているのが三浦しをんであろうと、それでもそこで書きたいと願う者たちが多くいるということで。
 かえって偉大なりW。
 の感を強めています。

 W向けには次は王道ファンタジーでと多くの同志と語り合いましたので、そのことばかりこの半年考えておりました。昨日、職場で、レジ前エントランスにハシゴ戦(Ladder Match)で使うような天井に届く脚立を据えつけて、夕暮れ時でもまだ途切れないお客さまがたの邪魔をしながら、正月の飾りつけなどをしていたのです。和紙でできたひらひらしたのとか、金銀の球に、やっこ凧とか。それはもうゴージャスにぶら下げまくってあまつさえテグスをつかってあっちにひっぱり壁に打ちつけレジに結びつけ──

 年末だけサッカー(レジ補助)の短期バイトに来ていた高校生に言われました。

「そういうのって設計図とかなくてお店の人のセンスで飾ってるんですねー」

 そうさ、ふふん。
 どうだいこの華やかさってば。
 あの鶴が梅の花に攻撃を仕掛けているところなんて見どころ。
 自慢げに答えたら。

「吉秒さんて、むりやりひねろうとする人なんですね」

 シンプルなままでキレイなのに。
 とか、そういうことを言われたわけで。
 もちろん、悪気なんてぜんぜんない、遊びすぎですよ、という冗談の口調だったんだけれども。
 私は、小説書きとしての同志のみなさまに、口をそろえて今年言われた、

「ひねらないで書けないのか」

 という(もちろんそういう口調ではなかったものの、そういう意味のことを本当によく言われました)セリフを想い出して、どよんど、としてしまって。
 よい喝になりました。
 一期一会のまさに自分の書いているものの読者層である彼女の無邪気な吉秒批判が、だからこそスマッシュヒットでした。右の頬に効いた。腰にきた。
 私は、出逢って一週間の少女にも透けて見えるほど「むりやりひねろうとする人」なんだ。

 というわけで、いまもプロット組んでいます。
 ひねらないファンタジーってなんなのか。
 少女マンガはなにを描けばいいのかわからない時代になったので、作家はまずそれを考えるしかない、とくだんの三浦先生もおっしゃっておられました。
 夢にうちこむ少女。
 それをかげで応援する年上の王子。
 あしながおじさんであり、紫のバラの人は、いまや現代少女にとってのファンタジーではないのだとすれば。
 だからBLなのか。
 『NANA』の構図。
 ヒロインは、ヒロインじゃない。
 そのほうがいい。

 彼は彼に恋する、その恋のお相手は実にヒーローだが、こちら側は、あくまで凡庸。普通。なるほどむりやりひねらない王道ファンタジーって、そうか。
 『ドラゴンクエスト』だ。
 男性向けエロゲーの主人公の前髪が長いわけだ。
 顔なし無個性。
 それがつまり、読者を主役に据えるってことなのか。

 てことは、主人公の彼が恋する彼氏こそをきわだったヒーローにするのが正解?

 という結論、間違っていませんか同志諸氏。
 いやもう、元日から書き出す気で(元日しか休みないので、友人たちが家に来てそば食っていく以外、いつもとまったく変わらぬ週明けなのです)、プロットは仕上がりつつあるのですが。

(ちなみにタイトルの除夕というのは中国語で大みそかのことだけれど多謝というのは日本語にしかないので、ニセ中華語となります。今年は中華キャラに凝った一年でもあったのでした。中途半端な知識を中途半端に使っているので真似しないように。来年は(プロット通りに進めば)まずは英語圏キャラを操ることになりそうです)

 というあたりで、唐突に今年もおしまいにしましょうか。
 ホモレスラーの掌編で一年を締めくくるのもなんなので(笑)、 『徒然』て終わろうかと思ったのですが、さして語りたいこともありません。幸せです。みんな大好きです。愛してる。一年の終わりに、これまで出逢えなかった多くの方々に訪れていただき、それだけでも、ひねりすぎた大人のオモチャに恋するW落選作『恋愛花電-A.F.L.-』を書いたかいがあったというものです。ヒロイン熟女です(本当です。これを認めるとはたいした懐の深さだ集○社。前述リンクの『徒然』でも書いたとおり、これを認めてこそだと期待したのはW編集部に対してだったのですが)。ジュヴナイルの生き神様(失礼)新井素子先生なら、わかってくださると信じています。
 また語りすぎそうなので、このあたりでほんとやめよう(笑)。

(余談ですが、いま組んでいるプロットの最終的な形を決定づけたのは、新井先生の初恋の人(ググってください。Wikiに詳しい)ってそういえば王道ファンタジーだな、私も好きだった、という連想から。というわけで結果がどうあれ、その出逢いがまた次の私を作っていることはまぎれもない。ああいまセンチメンタルに口ずさんでしまった……いまでも傷つくあのこともきみに出逢うための過去ならばー♪ 電子レンジで温め直して食べ頃になるといいよ本当に。Perfumeのこのアルバムは今年の収穫でした。
Perfume
 直球のチカラをそこでも再認識した。ひねっちゃだめだひねっちゃだめだ。テクノパワー!! 今夜限定復活イカ天とかで、来年はそのアルバムも出るんだとか。なんかもう面倒くさいのみんなイヤになってシンプルなほうへと回帰しているのかもしれない。勢いだけのバンドって、最近見ない。みんながみんな適度に上手くて、商業的で。二枚でどうだとか叫んでいた時代がなつかしくもなりますわよねそりゃ……保健体育の授業でまじめに「二枚重ねなど逆に危ない」と語らされていたジャージの体育教師のことも想い出して、お前はまず自分の相手をさがせ、と心のなかでクラス中の全員がつっこんでいたことも想い出してしまってせつない。復活イカ天観るけど、やっぱりせつなくなるんだろうな……ていうかさ、当時大阪でイカ天放送していなかったのに、復活祭は放送ってのは、なんですかね。いまでは大晦日の風物詩『ガキの使い』も、つい数年前まで関西ではレギュラー放送なかったですからね。あのころユーチューブがあったらなあ(それはそれで、クリスマスにYouTubeがM-1映像でパンクして外人が「日本のクリスマスってなに!?」とおののいたというニュースがまた新たなローカル放送ギャップ。漫才映像なんて言葉わからなかったらぜんぶ一緒だもんな。しかし決勝のサンドウィッチマンってそんなおもしろかった? イマイチのりきれなかった私です。ベタすぎるボケに醒める……ひねりすぎちゃだめなんだけどやっぱり完成度高い正統派にアレルギーがあるのかもしれない))

 初めてのかたも、もう長いかたも。
 ひさしぶりのかたもいるかな。

 吉秒匠でした。
 来年も、そうです。
 私です。
 どうぞごゆるりと、来年も。
 つながっていて。

 変わりつつ、でも変わらず。
 引き続いての次、いきましょう。

 よいおとしを。



「説得できなかったって顔だ、E/」
「あのボスという名のカツラ男に、おれがいかに時代遅れで、だれにも興味を持ってもらえないクソレスラーであるか、たっぷりと言い返された。まさにディレクターズ・カット付きの完璧さでおれの役立たずぶりをご説明いただいたよ。ノートパソコン突きつけられてな」
「脇役なしのこの世界の主役キング・イースラッシュに、ファンが興味を持っていない? そんなわけないと、ボスだってわかっているさ」
「やつの葉巻の匂いが染みついた液晶画面のなかに、おれが見た視聴率グラフではそうじゃなかった」

 ロッカールームのベンチに、上半身裸の試合着のまま、なみはずれてパンプアップされた巨体を誇張でなく小山のように置いて、E/は天井を見上げていた。
 ノミで削って作られた彫刻のように直線でできた肉体をそこに置き、生きる伝説と呼ばれるプロレスラーは、みずからの魂を解放しているかのようだった──このクソったれたショービジネスの、ねばついた欲望の巣窟から──天井を抜け、その先の、晴れ渡った広い夜空に。
 革のパンツを鳴らし、レノアはベンチへと近づきかけたが、E/が振り返る気配も見せなかったので、ドアを閉めてそこに立ち止まり、会話を続けた。
 ことさらに、うれしくも、かなしくもない、さりげなさを装って。

「嘘だ」
「いや。いまだ王座についたどころか挑戦権さえ手にしたことのない、セクシーな予言者ことビリー坊やが、戦いもせず恋愛ドラマをリングの上でやっているのが、ファンはお好みなのさ。十二度の王座についた、世界ヘビー級の王、E/が、老いぼれた喉で吠えるのなんかよりもな」
「……それを言うなら、おれのほうこそ若い奴らに喰われてる」
「おやおや。嫌味かよ。永遠のセンチメンタルベイビースターことジェファーソン・レノア選手。あのグラサンかけた扇風機で金髪なびかせてるマッチョな小僧どもが、だれのあとがまを狙ってリングで学芸会のマネゴトやってると思ってる? すなわち、ビリー坊やが売れるにゃ、お前も必要なんだよSBSレノア殿下」

 E/が振り返った。
 つきあいはじめて二十年になるが、リングの上では気にしたことのないE/の目尻のしわが、ロッカールームの寒々しい蛍光灯の下で、はじめてレノアの目にとまる。
 やつがそうだということは、おれもそうだということだ……

「ニュージェネレーションと、おれらは呼ばれたよな、E/」
「プロテインを静脈注射しなくても、勝手に筋肉が育っていたころの話だ」
「でもまあ、筋肉はシリコンだって入れられる。おれのほうが深刻だぜ、近ごろ脚が上がらない」

 E/は、目をそらした。
 そうさおれは──プロレスのリングにリアル・ファイトのスタイルを取り入れたレジェンドと呼ばれている──相手のあごや、延髄に、カミソリのようなハイキックを叩き込むたび、観客が沸いた。
 過去形だ──いまでもカミソリは切れるが、新品ほどじゃない。
 当然だ。
 自分の頭上を蹴るほどのハイキックを得意技にするすべての格闘家が、センチメンタルベイビースターの歳になる十年前には引退するのだ──しかしおれはまだここにいる。
 プロレスラーとは、そういう職業だ。

「だったら、お前も、エイリアンになってみるか?」

 E/が笑った。
 リングの王、E/が、観客もいないロッカールームで。
 自嘲して笑っている。
 プロレスラーだから?

「ボスはそのつもりだと思うね。E/がエイリアンに脳みそをのっとられるなら、おれはエイリアン・ハンター? それは若手の仕事さ。おれは、あんたを守るナイトになるしかないんだよ、キング」

 テーブルに並んでいる、冷えていないクリスマス・ケーキとシャンパン。
 こんな夜に、レジェンドふたりがなにを話してる?
 首を振り、レノアは、冷え切ったフライド・チキンをひとつ取ると、E/に向かって投げつけた。
 死角からだったにもかかわらず、キングはそれをなんなく片手で受け止めた。
 プロレスラーは本当に強いのか──インターネットのBBSでファンどもが繰り広げる、どうでもい議論を思い出し、レノアは声をあげて笑った。

「なにがおかしい」
「なにがかなしい? E/。メリークリスマス」
「おれはこいつが嫌いなんだよ」
「チキンが?」
「フライドチキンが、だ。クリスマスのたびに、おふくろが作ってた。べたべたした、ひどい出来だったけどな、ガキのころのおれや兄弟たちにとっては、年に一度のごちそうだったのさ」

 二本指でつまんだフライドチキンを見つめている。
 E/が持つと、まるで、子供がままごとに使う玩具のようだった。
 すべてのものが、彼のそばでは小さく見える。
 E/は、だからこそ、うなだれてはいけない。
 巨大であり続けることができなくなったとき、それは──

「おふくろは、死ぬまでおれのリングを見に来たことがなかった……息子が殴られるのも、だれかを殴るのも見たくないってな……世界中のだれもがおれの戦いを見たがっているのにだぜ? そんなおふくろは、自分のフライドチキンが、最高だと思ってた。大人になった子供たちが、いつまでもそれをごちそうだと思っていると、信じていた……おかげで、おれは、こういうプロの作ったフライドチキンを見るとムカっぱらが立つんだ。おふくろが逝くまで、毎年食っていた、おれのごちそうは、ファーストフードの1ドルチキンにボロ負けなんだからな」
「でも、そのフライドチキンは、ママの作ってくれたソウル・フードにはなれない」
「どうかな。だれでも、べたついたのより、こんなクリスピーなのが食いたいと思うぜ」
「それは単に知識の問題だと思うよ」

 レノアの言葉に、E/が笑うのをやめた。

「……どういう意味だ?」
「スーパーに行っても、ディープ・フライドの粉しか売っていないと知っているか? フライドチキン粉は売っていないのさ。なぜかっていうと、フライドチキンに生卵は欠かせないからなんだよキング。おふくろさんが作ってたのは、アジアでいうカラアゲだったんだろう。ジューシーな骨付肉をそうやって揚げれば、べたつきもする」
「……卵」
「おふくろさんは、南部の生まれだろう? あのあたりじゃ、それこそ生まれたてのソウル・フードだったころのフライドチキンがいまでも主流だって聞く。そもそも手軽に栄養を取るための料理であって、香辛料と高温で、傷みかけた鶏肉も、安全に食べるための知恵なのさ」

 遠回しな表現だったが、E/の優れた脳髄は、レノアの言ったことの意味を正確に理解したようだった。
 やがて大声で笑い。
 嫌いなはずのフライドチキンに、かじりついた。

「……卵は、ご主人様のものか。おふくろがおれらに食わせてたごちそうは、奴隷料理ってわけだ。ご主人様は、こんなカリッカリのフライドチキンを食えるって寸法か。おれもようやく、卵をつけたクリスマスチキンを食えたってことだな。なあ、SBS……おれたちは、行きついちまったぜ 」

 チキンを飲み込みながら、壁を向いたE/のそばへ、歩み寄った。
 その冷えた──岩のようにかたい──肩に、手のひらを置くと、まるで怯えた子供のように、小山が揺れる。
 事実、怯えているのだろう。

「E/、おれたちは、プロレスラーだ」

 山が膨らみ、そしてしぼんだ。
 吐かれた息が、部屋全体の空気さえ冷やす。

「……エイリアンだぞ?」
「1ドルチキンには、想い出も、感傷も必要ない」
「ふん。むなしいこと言うぜ、センチメンタルベイビースターのくせに」
「それだって、望まれたことだ」

 もういちど、言った。
 おれたちは、プロレスラーだ。

「プロなんだよ。技術も、知識だってある。思い入れがあるからといって、あえてべたついたチキンを揚げる必要はない……それに、わかるやつはわかる……忘れないさ」
「さすが、SBSのお言葉」
「茶化すなよ、キング・イースラッシュ」
「脳みそのっとられて暴れるおれが見たいか?」
「ああ、見たいね」
「カツラ男を殴って、一緒にとんずらと決め込もうぜ」
「そんなことを期待されても困る」
「プロだから……か?」
「ここは、おれたちの家だ」

 ずっと禁じてきたことだが、レノアは。
 E/の汗に濡れた髪に、指を触れた。
 リングで掴む以外では、触れたことのない、E/の一部へ。

「家か」
「出て行くなんて考えないでくれ、キング」
「そんな声で言わないでくれ、センチメンタルベイビースター」
「わからないのか? おれにはお前が、必要なんだ」

 E/が、黙って、かじりかけのチキンを肩越しに差し出す。
 レノアは、巨大な背中に手のひらをついて、それを口にした。
 クリスピー・クリスマス・フライドチキン。
 悪くない味だ。
 本当のところ、味は関係ない。

「……ああ。ベイビー。おれにもお前が必要だ」

 E/は、自分の口へと、冷えたチキンを戻す。
 思いがけないキングの返答に、自分の震えていることが、ばれていなければいいがと、レノアは神に祈った。

「今年が終わるだけだ。まだ、行きついていない」
「名言だな。お前はだれだっけ、おれの教師? 友? 敵だったか」
「キングにシャンパンを注ぐ、奴隷さ」
「注がなくていい。ビンでくれ」
「その意気だ、キングE/。人として降臨した王」
「メリークリスマス。そのキングは来年からエイリアンになる。酔いつぶれてえ」
「メリークリスマス……神には感謝している」
「神? 冗談だろ」
「いや。本当さ」

 ずっと禁じていたことだけれど──

Fried_chicken

 Yoshinogi Takumi
 Shonen-ai Cooking Elegy
 Song 3
 『Crisply Professional Fried Chicken』

(吉秒匠
 BL料理哀歌
 3曲目
 『クリスピー・プロ・フライドチキン』)

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 ずっと禁じていたことだけれど、BL書くプロレス・フリークとしては、もちろんレスラーたちをいじくりたいという欲求はあって。で、ちょっと書きはじめてみたら……萌えない。読み手としてということもあるけれど、書き手としてもまったくもって書きにくい。
 だいたい、世にBLの生まれて長きにわたり、需要があるならプロレスだの角界だのは、裸の男と男が組んずほぐれつな世界なわけで、題材にされないほうがおかしい。でも、本屋に行っても、ほっぺたピンクに染めたおすもうさんをおすうもうさんが背中から抱き寄せる表紙の文庫本なんて見たことがなく……つまり、需要がないのだ。
 理由を書きながら考えた。
 たぶん、それは少年誌のラブコメの主人公が陸上やっているならそれは長距離走や高飛びであって、砲丸投げや、やり投げではありえない、というのと同じ理由だ。
 水泳部は恋してもいいが、ラグビー部は不可。
 バスケ部も、背が高いという意味では画的に萌えにくい。
 要は、でかいと萌えにくい。

 日本でいえば、ノアのジュニアは世界一!! とか。
 ドラゴンゲートの空中殺法萌えとか。
 会場でも黄色い声が飛び交っていますし。
 100キロ以下ならまだしも同人誌も作れようが、小橋×秋山(逆が攻のほうがいいか。余談だが、本来、この表記は「小橋にかける秋山」と読み、受は前者。むろん日本語独自の文化である)や、棚橋×中邑だとか、小島×川田などとなってくると、もう想像するだに暑苦しい。想像しなきゃいいんだが。
 苦肉の策として、アメリカンプロレス好きなら元ネタの選手がすぐわかるが、一般BL読者層ではまずぴんと来ない外人レスラーのイメージで書いてみました。でもやっぱりまとまりにくい。

(そういえば川田利明こそプロレスに蹴り打撃技をもちこんだ代表格だ。大好き。でも、実際のところ、世界的に見ても、そういう総合格闘技のスタイルをプロレスオンリーで魅せる選手というものが、いよいよ老いの境地に向かってゆくというのは歴史上はじめてのことであって、十六文キックは若手選手のほうが吸い込まれてくれたりで続けられても、もう猪木は延髄切りできないだろう、というような哀しい未来がすぐそこにありそうでつらい。最近の川田、ハイキックつらそうなんだもん……あれだけの練習量をもってして、老いる人の世の無常であるのことよ。KENTAなんかに至っては、四十までもつだろうかってくらいの感じがあります。よけいなお世話ですね)

 思うに、どっちも弱くなれないというのも、大きい。
 最初は、センチメンタルベイビースターを「ぼく」と言わせていたのですが、やっぱりそれではプロレスラーの(それもレジェンドと呼ばれる)打撃系選手のキャラクターにそぐわない。むろんE/のほうは「おれ」以外にありえないし。けっきょく、普段はセリフだけでどのキャラなのかはっきりわかるように設定する私でさえ、セリフのなかで互いを呼び合わないとわかりにくいというものになってしまいました。
 プロレスラー、というくくり自体が、ひとつのキャラクター要素として勝ちすぎてしまうのですね。眼鏡っ娘萌えは、攻略キャラのひとりとして眼鏡っ娘がいるから成り立つことで、ぱっとしない企画ものAV制作会社が気合い入れて『ぶっ×全員眼鏡っ娘学園』とか作っても、笑えるだけでしかない。ていうか笑えもしないので売れないでしょう。

 キャラのひとりが徹底的なプロであるならば、相方は素人でなくては成り立たない。
 プロレスラーと新米スポーツ紙の記者、ならば書きやすい。
 プロレスラーと観客、というほうが現実的な恋愛感情はずっと生まれそうですが、BLの作法として消防士に救われた被害者がその消防士と、とか、医者と患者、なんてのは御法度です。なぜなら対立の構図が生まれないからですね。シーンとして必要不可欠なもの、それは。

「きみはプロだろう!! だったらプロレスラーらしく吠えてみろよ!!」

 と、売れっ子レスラーが新米記者に叱責される、とか。
 で、ふん、とかその場では言うものの、そのヒヨッコ記者のことが忘れられなくなる、とか。
 そういうの。

 ふたりともレスラーで、しかも老いはじめた同期のスーパースターでは、やっぱり哀歌にしかなりえないので、需要もなくこんなレシピの添え物になるしかないのです……

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●材料

鶏肉 もも肉なら2枚
(今回の写真は骨付きですが、普段は大きめに切ったブロックで作り、素揚げにしたニンニクを添えてナイフとフォークで食べることが多い。なにせ骨付きは指がてらてらになりますから)

○A
ハーブ各種
(今回はオレガノ、バジル、ナツメグ、ターメリック、タイム、ジンジャーパウダー、ブラックペッパー、レッドペッパーを使用。量は好みだけれど、クミン、タイムが瓶1振り、他が2振りくらいか、いっそ唐辛子を増やすと味なんて関係なくなって良いかも。ローズマリーもおすすめ。クミンとかカレー粉でインドチックもおすすめだが油に匂いが移ります)
薄力粉 大さじ3
強力粉 大さじ2

○B
塩 小さじ1
赤ワイン 50cc
牛乳 50cc
卵 1個

●作り方

Bの材料をまぜます。
鶏肉を漬けます。
Aをまぜた粉をまぶします。
揚げます。
できます。

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 ほんとはね、肉を酒に漬け込むとか、卵は黄身だけでとか、揚げるときもフタしたほうがいいとか、こだわりどころはいっぱいあるのですが(ケンタッキーフライドチキンでは圧力釜をつかっているそうで、本場アメリカでは実際にそうやって作る家庭も多いのだとか。圧力鍋で揚げ物ってなんか怖い)。面倒くさいので簡略化できるところは簡略し、でもこれ以上行程を削ったらイマイチなものになってしまう、というぎりぎりのラインが、ここ。
 ていうかさ。
 揚げて喰らってパーティーで良いやないの。
 フライドチキンってそういうものやないの。
 多少焦げたのなんてビールおかわりして四杯目くらいにはどうでもよくなってるよ、うほぉおおうっ、と吠えてテキーラ注いだグラスを手のひらでフタしてテーブルにたたきつけ、おまえをだきたいぜぇぇぇっぇぇ、とシャウトしながらあおるのに添える料理であって、極論、クリンゴンなみのアザだらけのファックのあとで気を失ってそのまま眠り、開けっ放しだった窓からの冷たい空気でくしゃみしながら目を覚まし、痛む頭を指先で支えながら水を求めてテーブルに手をのばすと、そこには囓りかけのフライドチキン。
 冷えてかたいチキン。
 台所まで行くのは面倒なので、気の抜けたぬるいビールで我慢して、そのフライドチキンを口に放り込んだら、租借するその音であいつが目覚めて、食べるなら残っているのあたためようか?
 訊くから答えたのさ。

「おれにとって、フライドチキンはこういうものだ」

 なにそれハードボイルド?
 いいからシーツに油つけないでよ。
 言われておれは鼻で笑う。
 フライドチキンってそういう食べ物。
 味なんて関係ない。
 おれはここにいるおれとお前を愛しているよ。
 ……なんだこれ(笑)。

 おまけ。
 クリスマスというとスーパーでモモ肉大安売りなので、ジャンバラヤにものっけてクリスマスバージョン。炊くときに一緒に放り込むだけ。肉汁も米に染みて猫まっしぐら。ママも大助かりのお手軽ソウル・メニューです。

Christmasj

 ジャンバラヤ・レシピはこちら↓

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『ジャンバラヤで喰うケイジャンの魂』の話。

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 いやあ、いよいよなんのサイトだ『とかげの月』。
 来年こそは、なにか大々的に宣伝でもしたいね(笑)。
 メリークリスマス(涙)。 

 よい聖夜を。
あらしのなか運転しているとバス停で三人待っている。
最初はばあさん…歳くってるし病気でクタクタ。
次は親友…あんたの人生を救った。
最後は…あんたの夢に出てくるような抜群の女。
みんな乗せたいが、車にはあとひとりしか乗れない。

16

映画『16ブロック』
(吉秒訳により日本語版の字幕とは若干違います)

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 さてどうする。

 ところで年末。
 クリスマスツリーを叩き売っている毎日なのですが、肌で感じることに、今年はサンタの衣装が売れない。特にミニスカートの女の子向けが売れない。原価を割った値付けでまだいっぱい残ってる。白い羽根でできたのとか、ポインセチアとか、ちょっとひねったクリスマスツリーも売れない。ものすごく普通のツリーが普通に売れて、売上げも前年比をちゃんと越えていて、売れていない感はまったくないのだけれど。

 お祭りムードがない。
 お祭りムードって、いま書いて思ったけれど昭和っぽい言葉ですね。椎名林檎の歌詞に出てきそうな。
 いやどうでもいいんですけれど。

 まーなにをこうグダグダと書いているかといえば、非常に忙しくてですね。ここに書こうと思っていたことはいっぱいあるのですけれど、机のうえにメモはいっぱいなのですけれど、ひとつのテーマを掘り下げて書く余力がまったくない。小説は書いていますが、調香師のホモの話とか書いていて、旧家だの蔵だの設定つけてしまったら、書きながら非常に鬱になります。嘆美が好きで得意なのだけれど、書いていると自分でため息が出る。

 ハイアン・グレイシー氏が、逝かれましたね。
 好きだったのですが。
 スポーツ紙のウェブ版で一報を読んだときにはただ残念に思っただけだったのですが、朝になって一般紙にもその記事が載っていて「さすがグレイシー一族」などと感心したのですけれど、スポーツ紙の記事では感じなかった妙な違和感を、一般紙のほうでは感じた。
 なんだろうなあ、と思って読み返して、気づいたんですが。

「ブラジリアン柔術家ハイアン・グレイシー氏(33)」

 て書いてあるのです。
 記事の内容は。
 ナタを持った柔術家が真っ昼間に車を襲い、その後バイク便も襲おうとしてバイク便仲間のバイカーたちに取り押さえられ、警察に捕まったらコカイン吸引の痕跡があり、興奮していたので鎮静剤を処方したが、翌朝には留置所で口から血を流して死んでいた。
 ということで。
 リングでケンドー・カ・シンの顔面に拳を叩き込んだこの国のプロレス・フリークのあいだでは忘れられない暴れっぷり以上に、レフェリーに殴りかかるとか自分の足を撃ったとかマフィアにさらわれたことがあるとか、そういう破天荒なエピソードのほうが記憶に残る選手だったのだけれど、本当に私生活はむちゃくちゃだったんだなあ、そして『PRIDE』崩壊の余波がこんなカタチでも現れたのかもなあ(ハイアンは桜庭に負けたままだったし、吉田秀彦にもケンカ売っていた。存続していれば試合が組まれただろうし、ヤク中になる暇もなかっただろう)とか、すさんだ気持ちになるニュースだったのです。
 で、なにが違和感、感じたかといえば。

 「氏」

 日本での事件なら「ハイアン・グレイシー容疑者(33)」とか書くところなのでしょうが、よその事件だし、本人も逝ってしまっているし。でも「氏」は、なんかおかしくないか? ちなみに同じ新聞のスポーツ面では、現役のスポーツ選手を呼び捨てにしている。圧倒的な強さを見せたタイソン・ゲイに対し日本人選手たちは……とか。死んだから「氏」がつくのだろうか。
 まあ、これもどうでもいいことですね。
 違和感といえば、『PRIDE』崩壊を記事にしなかった一般紙が、なぜハイアンの死は記事にするのかという根本的なところも解せないものがあります。
 この世は謎だらけです。

 あーそういえば発売されたのでなにげに『VF5』を買ったのですけれど。

VF5

 友人と、はじめてネット対戦したのです。
 その試合後、私の送ったメール(といってもXbox360に実装されている文字チャットのような簡易な機能。なにかと便利)の内容が、これ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オーブンが呼んでいるから行くよ。
やっぱりラグがきもちわるい・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ピザの生地こねてオーブンで発酵させていたのができあがったブザーだったので、ほんの数試合しかプレイしていなかったのですが、この新世代『バーチャファイター』のネット対戦が、これはもうすさまじく良くできていて、ドリームキャストでのカクカクカクカクカクカクカクカクカクカクした「ゲームにならねえよこれぇっ」という、やっぱりネット対戦なんて未来の話なんだよという絶望を通過してきた私たちにとって、普通に試合できてしまうそれはすごいこと。

 でも。

 違和感が。
 あまつさえ、その対戦相手の友人とは、学生時代に初代バーチャファイターが段ボール箱みたいなカクカクカクカクカクカクカクカクカクカクしたキャラで誕生したころからゲームセンターに棲んでいたセガっこ仲間なのであって、あれがこうなってお互い自宅にいて食事前の数分で一試合とか当たり前にできてしまう……これはもう、あのころ思っていた未来を越えた未来なのに。なのに。なのに。

 ラグがきもちわるい。
 それが、第一声。

 一秒ないタイム・ラグ。
 まばたきよりもずれていない。
 でもポリゴンという言葉をおやつに食べて育った私たちにとって、その刹那のズレが、違和感になる。

 世界はおそろしく小さくなった。
 未来はもう来てしまった。
 でも私はぶーたれる。
 満足していない。
 あらを探そうとする。
 ああいやだと、思うのです。

「あの強いハイアンが死んじゃった!!」
 と泣けない。

「バーチャで違う国のだれかと普通に対戦してる!!」
 と喜べない。

 クリスマスがすっかり仕事の現場になっている。
 最初のクエスチョンに、主演のブルース・ウィリスはラスト・シーンでシャレた答えを返すわけですが、観ながら私は、ごく普通にこう思ったのでした。

「見ないふりをして通過する」

 だれにも恨まれたくない。
 やっかいごとになるなら、夢に出てくるようなベイビーもいらない。
 他のふたりを置いて自分だけ助かるようなやつはおれの親友じゃないし、ばあさんは死にかけてるし病気なら乗せたくない。

 ……ああ、ほんとにねえ。
 ハイアン・グレイシー氏(33)が、よく試合前にやっていた、相手にキスするくらい近距離でのガン飛ばし。頭を上下に振ってね、威嚇するわけですよ、相手を。大阪の場末の小売店で年末に立っていますと、そういう奴らがわんさといます。私も今日、ふたりに人差し指であごをはじかれ、笑い返してお帰りいただきましたが、ときどき、右手が震えることがある。
 いやですね、すさんだ年の瀬。

 クリスマス、うかれたいな。
 久々に本気で徒然てしまった(笑)。
 愚痴でした。
 オチもなにもない。
 次がんばります。