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 きっともうすぐウィングス系の台頭する流れが来る、と、ここでも書き続けてきて、この数年のCLAMPさんの少年誌と少女誌の枠を飛び越えての活躍や『コードギアス』などに「ほんとに来たよ、おい」とか言っていたわけですが。次のガンダムが高河ゆんキャラだそうで。少女マンガ界からガンダムへ殴り込みだと一般紙でも取り上げられる話題っぷり。しかしこうなってみればわかるのは、あきらかに萌え業界が腐女子層こそが金になると気がついたって事実。

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 『メイドと種の保存』のこと。

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 それが売れるなら、チンコくわえるよりもケチャップ片手に笑っているほうがずっとリスクが少ないし、規模を広げやすい。そうこうしているうちに、ガンダムという男の子の夢とあこがれの巨大ロボットものまで少女マンガ化されることに……最近目にした、絵本シリーズを思い出す。

 『もえたん』のぽっぷ氏がポプラ社から古典絵本シリーズを!

moetan
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 ポプラ社なので安心してお子様に買い与えてください。大きな声では言えませんが「こうして見るとアリスってエロくね?」というようなお兄様がたも、どうぞ遠慮なさらずに買ってください。

 ガンダムなのでどうぞご安心を。
 『鋼の錬金術師』の監督ですご安心を。
 高河ゆん先生ですご安心を。

 えーとそれで。
 ガサラキ好きなぼくはどこ行ったらいいですか。

ガサラキ

 萌え産業はバターを越える。
 そして、世界が萌えになる。
 今日、プリキュアのTシャツを着たクレーマーさんを応対しました……成人男性です……バイク用ヘルメットに傷がついていたというような話で。ええそうですねえ申し訳ないと言いながら、プリキュアのTシャツ着て量販店のサービスカウンターに足を運び担当者を出せとすごむことになんの抵抗もないのなら、ヘルメットの傷など些細なことではないだろうかと思ってしまいましたよ、むろん安全面の問題がありますので謝りましたが。

 萌えは恥ずべきものであって欲しい。
 いまや安心してどこでも買える萌えですけれど。
 それってやっぱり性的嗜好だと認識しておくべきだと思う。
 堂々とカミングアウトするのは楽しみかたとしても違う気がする。

 すべてを萌えに置き換える、一方でガチの硬派さもなくさない。
 男性誌でもなく女性誌でもない中道。
 それがうたい文句だったウィングスは少女誌と呼ばれるようになり。
 いまやガンダムまで。

 テニプリもハガレンもコナンもディーグレイマンも。
 少年誌もなんだか萌えな近頃。
 いざこんな時代になってみると。
 ガチでハードコアなロボットモノとか観たくてたまらないのはボクだけですか?
 闘うヒト型機械がどんどんスマートになっていくのに嫌悪感をおぼえます。
 ヒト型ロボットは重心の低いほうが強いに決まっているのです、曙(現ブラック・ハワイアン)が鋼鉄製で自重によって腰を痛めずモーターパワーで素早く動ければ最強に決まっている。

AG-V16

 美少女と美少年なしではもうなにも描けないのか。
 この件は、街で不良らしい不良を見かけなくなったことに関係あると思う。
 ひらひらした萌えドレスの下にレギンスとかジーンズとか履くファッションが目に余ることとも関係あると思う。

 いいんだか悪いんだかはともかく。
 仮面ライダーもガンダムまで萌えになってしまうなら、タイガーマスクやケンシロウも不在の少年誌のかわりに、少年に男というものを叩き込むなんらかの新たな舞台とヒーローが必要ではないだろうかと真剣に憂います……『不思議の国のアリス』を幼いころ読み聞かせられた想い出って、私のなかではかなりホラーによっている。あかるくかわいい、そんな男の子や女の子ばっかりになったら、いったいだれが闘うんだ。チェシャ猫は不気味な生き物としておどろおどろしい挿絵でガキの脳裏にトラウマ撃ちこんどく必要ないか?

 世界は萌えになっても、現実には萌えで片付かない生々しさがある。
 あいだにレギンスのあるのが不満だ。画面という壁があるのがイヤだ。昔ながらのジャニーズアイドルは、少なくともコンサートでファンのそばを通り握手する。でも近頃のジャニーズ系以外で台頭してきたw-indsやWaTとか映像観てると、むちゃくちゃファンとステージのあいだが遠い。あのライブって巨大モニタを観に行ってるようなものだ。おニャンコの再来とされるAKB48も、毎日公演だがステージ出て下がって、ファンの側もせめて紙テープで触れるとかそういうのもなく、目に見えないガラス越しに萌え狂っているだけに見える。
 近頃のアイドル萌え者たちの熱狂は、どうにもマスターベーション的。

AKB48

 これはきっと学生運動がなくなったことにも関係あるね。
 逆に言うと世界が萌えになればテロリストもいなくなるな。
 もういっそ紛争地帯に行って空から萌え絵本とかばらまいてみたらどうだろう。
 ウィンドウズビスたんとかマングローブびんちょうたんみたいに、地球たんを流行らせればエコ問題も解決では? 「アースたんからお願いされたら自転車通勤にするし汗だらだらかいてもクーラーつけないもん」……いけるって。首相が蛍光灯球普及にエコ広告一面出すより、ぽっぷ氏に一枚書いてもらえばいいんだ。高河ゆん先生には原子力発電と米軍基地問題を解決してもらえばいい。年金課の職員には着ぐるみを着せようプリキュアの、瞳孔サイズ三割り増し、額の広さ四割り増しで。

tan

 可愛い女の子が増えると世界は平和になると信じてる。
 可愛い男の子も世界を平和にするだろう。
 しかして萌えの台頭は、可愛くないオタクを増やしているだけな気がする。
 立派な大人だけれど、でも待ち受けプリキュア、とか。
 その携帯覗き込まれそうになったらさっとスマートに隠すとか。
 次のガンダムは高河ゆんらしいよと話題にしないとか。
 お姫様サマードレスの下にジーンズ着けないとか。
 風が吹いたら、きゃぁ、と言って押さえようよ。
 
 迫害されていた時代のオタクのけなげさ。
「仕事のあとのこの一杯のために働いているよね」
 ぐびーっぷはーっ、みたいにそっと帰った部屋で棚のフィギュアに「ただいま」と微笑む。
 そういう萌え消費者でありたいものです。
 一般紙で高河ゆんのなんたるかとか、萌えとか、ラノベの文学性とか、したり顔で語る識者とか消えて欲しい。まったくの私事だが、我が母校(某関西系美大美術科)にアニメーション科とマンガ科ができて新聞に一面広告を載せたりしはじめてそこで紹介されている在校生の作品がものすっごい萌え絵で。少子化の世で母校が生き残りに選んだのはそれなのかと美術科出の身としては複雑な心境です。まあ萌え在校生が増えれば萌え先輩も大きな顔ができるようになるので、いつか私の作品もテキストにしてもらって数千部まとめ買いとかしてもらうという夢もふくらむのですが(笑)。国の支援で世界進出はけっこうだけれど、こそっと世界を牛耳っていって欲しい「萌え」。いつのまにかどの家庭にもあるよね「萌え」……電子レンジの普及みたいなそんな感じで。

 つつましやかに華々しく。
 萌え美学はそれぞれの心のうちに。
 美しく咲き誇っていただきたい。
 世界の萌え、萌えの世界。

M@STER

 しかし、『アイドルマスター』の追加コンテンツの売り上げが一億円を突破したというニュースには考えさせられる。これは、Xbox360という電脳世界と自宅をリンクさせたゲーム機の普及によって、ゲームのキャラの着せ替え衣装のダウンロード販売が爆発的にヒットしたという現象を示しているのだが。レンタルビデオ店で借りるしかなかったエロビデオがネットで視聴できるようになって、はっきりとしたデータは持っていないが、きっと売れるポルノのタイプも変わってきただろうと思う。カウンターのおねいちゃんのさげすみの視線に怯える必要がなければ「ぼくはこういうものが見たかった」と選ぶ商品も変わるはず。

 スク水、ブルマが記録的、セーラー夏服が配信開始で、もう一億くらい売れるのだろうか。ネット通販でだれとも顔を合わせずに本物のコスプレ用衣装は買える。ダッチワイフも買える。どうせ買うなら着せて抱けるそっちのが良いような気がするが、実際にはCGのキャラに着せるCGの衣装が一億円売れている。
 ウォーホルの言葉を思い出す。

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 アートとは無駄な空間を埋めるものだ。


 アンディ・ウォーホル

Andy Warhol

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 量産されるシルクスクリーン版画、それもウォーホル自身が刷ったものでさえないそれが、世界中で何百万円、何千万円の値で取引されている。寂しい壁の空間を埋めるため? だったら寂しいゲーム画面……もしかしたらプレイヤーのココロ……の空間を充足させるためにダウンロードのCGブルマを買うのは、実にファインアートな感じがする。

 そうか萌えとは、素直になることか。
 ココロの解放だ。
 値段について考え始めたら楽しめない。
 一瞬の悦び、刹那の充足のためのダウンロード。
 そう考えるとCGスク水一億円売れる国ってのは。
 とてもストイックなココロの探求者にあふれている。
 とてもおだやかで素敵な国なんだなあ、と思うよ。
 (360のこの国での不振を考えると特にね)



 So Cute! "Sakura Kinomoto"
 I like this video so MUCH!
 ~Enjoy it!~^_^

 ↑投稿者の萌え気概が伝わってくるようだ。
 そうだこれは日本の生んだ魔法だ誇れ。
 世界が萌えになればいい。
 世界の萌え、萌えの世界。
 萌えガンダムSo Cute!
 きっと平和な次世界になるだろう。

CCsakura

 今年もいろんな情報があふれてたのしいE3。

 マイクロソフト公式『E3 2007 特集』

 我らがXbox360では恒例『お家で楽しむ E3 - Bring It Home』もはじまって、E3会場で流れてるムービーやプレイできるゲームの体験版が自宅にいながら見たり遊べてしまうとあって、この時期360のトレイにディスクいらずな毎日なのですが。

 まあ、なんだかんだいって360のダウンロードは回線の速さに関係なく遅く、パソコンで見られるものはそっちで見たほうがさくっとゆく。というわけで、この素敵な企画を堪能。PCでムービーを再生しようとクリック……あれ?

 大事なこと思い出しました。
 去年は見られたムービーが今年は見られない?
 ああ、グラボ変えたし。
 モニタ変えたのは関係ないか。
 ていうかVista導入。
 Windows Media Player11搭載。

 なるほどまだまだ不具合多いWMP11とは噂に聞いていたが、どうもそのあたりが原因らしい。ムービーを再生しようとしたらWindows Media Playerが起動せず「Internet Explorerでこのページは表示できません」とグズられ、なんなんだと思いながらF5キーを叩いて再読込みしてみると、読み込みっぱなしでWMPが起動するどころかまるで生きながら死んだ感じ。ちなみにムービーはasxという拡張子のファイルでストリーミングファイルに橋渡しされているのだが、このasxファイルを「対象をファイルに保存」して、それを読み込むかたちならWMPが起動して再生される。

 どうやら、asxとWMPの関連づけがうまくいっていないようだ。
 で、いつものごとく。
 マイクロソフトのサポートページへ行ってみた。
 で、いつものごとく。
 マイクロソフトのサポートページは役に立たない。

「ツール」
 ↓
「オプション」
 ↓
「ファイルの種類」

 でasxを関連づけろと教えられるのだが、Windows Media Player11を起動させて言われたとおりにやってみたらモニタに拳を叩き込みたくなること必至である。WMP11のオプションに「ファイルの種類」タブはない。WMP11そのものがVistaとニコイチなので、どうやら10までとは違ってVista側からWMPをいじくるんではなかろうかということは推察されるものの、マイクロソフトのサイト内検索やヘルプで、役立ちそうな情報はまるで見つからない。まあ、いつものこと。以前、こういうこともあったし。たぶん、みんな「役にたたねえなあ」と思いながらマイクロソフトに苦情を言うのも面倒なので別の解決策をググって解決してしまうからいつまでたっても鍛えられないという側面もありましょう。

 といいつつ、自力で解決できたので、ググってきた人のための解法を……ああまたマイクロソフトを甘やかしちゃったな。
 Vistaを起動。

「スタートボタン」
 ↓
「コントロールパネル」
 ↓
「プログラム」
 ↓
「規定のプログラム」
 ↓
「プログラムのアクセスとコンピューターの規定の設定」
 ↓
「カスタム」であれば下方向矢印アイコンで展開。
 ↓
「既定のメディアプレイヤーを選択してください」
 のなかから
「Windows Media Player」
 を選択。で「OK」をクリック。

 これによってasxもWMP11に関連づけられた。
 ていうかasxってそもそもマイクロソフトとメディアプレイヤーのためだけにあるファイル形式なのに、マイクロソフト公式サイトのムービーをVistaのデフォルト設定では視ることができないってなんなのか。

 まあ、いつものことなんで、もう腹も立たないんですが。
 困ったヒトたちだ。
 二十三時。
 妻が背後から男に抱きつかれた。
 うちのすぐ前で。

 前に回した手でカラダをまさぐられながら、彼女は悲鳴をあげて逃げようとし、地面でもつれる格好になってアスファルトで肘をすりむいた。抵抗激しく悲鳴も途切れないことから男はあきらめたのだろう。

 逃げた。

 私は風呂に入っていた。
 ゆえに玄関に鍵をかけていた。
 妻が泣きながら飛び込んできても気づかなかった。
 風呂をあがってフローリングにへたり込んでいる彼女を見て言ったものだ。

「なにしてんだよ」

 我が家では仕事柄、夕食がこの時間だ。
 平日だと一時間ほど帰りが早いので私が用意する。
 餃子だった。
 半分は休みの日に冷凍したもので、半分はレトルト。
 ホットプレートに並べ、ふたをして私は風呂に入ったので、湯気がしゅうしゅうと立ちのぼっている頃合いだった──いつもなら、帰ってきた彼女がいそいそとお茶だのビールだのと用意をするところである。私は餃子の焼き加減を気にしながら部屋を移動し、あまつさえ風呂あがりの習慣で腕立て伏せをはじめ、その日は少し肩幅よりも広く手をついて肩から背中にかけてを緊張させようとゆっくりと二十五回ほど上下したところで異常に気づいた──
 泣いてる?

 そこまで三分。
 そして私が彼女から「すぐそこで痴漢にあって肘をすりむいたけど逃げてきた」と聞き出すのに一分。

「どこでだって?」
「だからそこでだってば」

 彼女が言って玄関に向かおうとするのでそれを制止してドアをあけるなと言いながら私がとりあえずの衣服を身につけるのが一分。
 ドアを開け。

「どこで?」
「ここで」
「顔は?」
「見てない。手袋してた。白いシャツ」

 五年前に彼女は駅から尾けられて風呂場を覗かれかけたことがある。
 そのときはガラスの外の気配に気づいて私を呼んだため、痴漢の顔を見たのは私だけだった。
 そのときも逃げられた。
 むろん110番通報もしたのだが。
 その記憶があったので、風呂場のある裏手に回った。
 思えばもっと即座に110番すればよかった。

 三分後──つまるところ十分ほど事件発生から経ってから。
 通報。

 電話のさなかで、すでにパトカーがこちらに向かっていると伝えられる。
 あらましを語っているあいだに、サイレンが聞こえた。
 では、現場に着いた者にもう一度説明をお願いしますと言われ電話を切る。
 玄関を出ると、サイレンを打ち鳴らしたパトカー二台に白バイ数台がどかどかと目の前の道路に溜まってゆく。
 二十三時だ。
 我が家では夫婦とも帰宅直後の時間だが、ご近所様にとっては真夜中。
 迷惑をおかけして申し訳ないと思いながら、そんな場面であるのにもかかわらず、日頃からバイク乗りの黒ずくめファッションの銀色チタンの時計とサングラスを愛用するどう見ても武闘派の旦那だと思われているに決まっているところをさらに誤解をひろげては生きにくいと、自らパトカーの前で妻と並んで五人の警官にとりかこまれて質問を受ける。ご近所様が出てくるは、そこらじゅうの家の窓が開くは、完全に注目の的である。当事者である妻が女性警官に調書を取られるだんになり、近所のほとんど会釈しかしたことのないタバコ片手で寝間着姿の長老たちのそばへ私はおもむき、大まかな事情を話して迷惑かけることを謝った。これで少なくとも「あの旦那が」やっぱりドメスティックバイオレンスだったのよというわかりやすい噂になることはないだろう。長老はへらへらと笑って「あっちに逃げたんか」とむしろ楽しげだった。私の「妻が男に後ろから抱きつかれて」という説明がたいしたことないのに通報しやがってという笑いになったのだろうが、それはむろん妻が「レイプされかかった」というような噂の張本人にならないための私の脚色である。家に私が留守で、逃げ込むこともできなかったら、いったい彼女はどうなっていたのかわかったものではない。

 ともあれそこから近所の捜索がはじまった。
 その段階で十五分ほど経っているのだが、妻の言う「男の逃げていった」という方向が奥まった方向への道であるため、まだ近所にいる可能性が高いと──あれよあれよとそこら中でマグライトのまっすぐな光が薄曇りの空にまでのびている──私服の見るからにいかつい数人も駆けつけ、また一から私に話しをさせる。勤務先から「結婚はいつ?」というような、なぜそれが必要なのかということまで訊かれるが、どんな事件もどんな事件に発展するかわからないのでそういうことも必要なのだろう。私が会社の名を出すと「勤務はどっちの?」と即座に返ってきたところをみるに、ここから通える位置に私のつとめる店のチェーンが二軒あることを彼らは知っていたようだ。そういえばここでも書いたことがあるが(風呂を覗かれた話同様、ブログ引っ越しの前のことなので記事は消えているけれど)、私も店で手錠をかけられた女性を連れた警官と話したことがある。ウチの店で買った包丁で殺ってしまったということだった。そういうことで、そこかしこの凶器が買えそうな店のことは職質する警官たるもの頭に叩き込んでおく必要があるのかもしれない。ガムテープもチェーンソーも売っているんだし。
MAGLIGHT
 そんなこんなでほとんど合コンで初対面の相手に自己紹介しているみたいな話しが続き(ケータイ番号まで聞かれた)、いかついが実はやさしい(えてしてそういうものだ)、あきらかに人の筋肉を値踏みする武闘派警官が、私に「酒を飲んでいるか」と訊いた。いや、帰ったばかりなのでと答えると「免許、持ってはるんよな? 服、持ってきてもらうかもしれへんから」と言う。一瞬、意味がわからなかったのだが「彼女が、襲われたときに着ていた服を着替えたいかもしれないから」、車を運転できるように飲むなと言っているのだった。ということは、妻は連れて行かれ、私はここで待つという展開が確定なのだ。この時点で、長丁場になるのだと確信した。

 直後。
「奥さん、おかりしていいですか?」
 いいですかってなんなんだと思いながらも頷くと。
「ひとり、職質で引っかかったんで、奥さんに見てもらいます。あ、もちろん、向こうからは見えないようにカーテンかけたパトカーの後部座席に乗ってもらってですね、私どもがきちんとお守りしてです」
 ──ああ、つかまったんだ。
「ただ、奥さんの証言ですと、白いシャツで男は手ぶらだったということなんですが、いま引っかかったの白いシャツの上にチェックのシャツを羽織ってカバン持っているんですね。いやしかし、時間的にちょっとあれですし……上着脱いで、カバンと一緒にどこかに置いておいて、奥さんを尾けたって可能性ありますからね」
 でも、彼女は後ろから抱きつかれて暴れて手袋はめていた白シャツの男としか認識できていないのに、顔見てわかるものだろうか。
「いや、それでもとにかく一度」

 どうやら、職質を受けている男に「あのパトカーに被害者が乗っている」という揺さぶりの視覚効果を与えるために彼女は連れて行かれるような気がしてならなかったのだが、揺さぶってゲロするものなら吐かせて、がっつり手錠かけてくれと思いつつ、送り出す。

 残された警官たちも、そのあたりの地面をマグライトで照らしてみたりしていたが、どうやらなにも落ちていないとあきらめるや、捜索へと向かっていった。

 残される私。

 向かいの家の開いた窓から視線を感じる。
 こちらの会話は聞こえていないだろうが。
 妻がパトカーに乗せられて連れていかれ、最終的に旦那だけがぽつんと残されているというのはどういう状況なのだろう──でもなんだあいつがついになにかやったんじゃないのか──そういう失望を与えたのならそれも謝ろう。

「電話おまちください」

 言われたのが最後の言葉で。
 そそくさと家に戻るが、生焼けで電気を切ったホットプレートのうえの餃子をどうしたものかと悩み、しかしすぐ戻ってきたら餃子焼きなおして食べている私はどうも間抜けだし──そうだな、記憶の薄れないうちに原稿にしておくか──と、これを書き出したのですが。

 現在、午前一時。
 音沙汰なし。
 そして空腹。
 いつまで待てばいいのだろう、これを理由にして明日仕事やすんでいいだろうか……ていうか、この長い時間は完全に、妻はどこかでお茶でも振る舞われているのではあるまいか。私にカツ丼はないのか。
 餃子食ってもいいかな……迷いどころである。

 犯人捕まったら新聞載るかな。
 載るんなら取材受けて謝礼とかでるかな。

 ……はっきりと妻が痴漢に遭ったというのに、どうにも腹立たしいという感じではない。
 なんというのだろうか。
 彼女はいかにも見た目がおとなしげなのだが、わめくし暴れる。
 むざむざと襲われっぱなしになるような女性ではない。
 むろん、これが人っ子ひとりいない路地裏の出来事であったなら別だが。
 叫べば近所の家の窓が開く、そんな場所でこういう犯行は、浅はかすぎる。
 きっとおとなしそうな女性は襲ってしまえば声も出なくなるという、痴漢ものエロゲーにでも洗脳されてしまったバカだ。
 あの警官たちなら、捕まえてくれるだろう。
 こんな薄情にもその場で事件を原稿に落としている……実はひそかに家の前に警官がいっぱいのところを写真に収めることまでした(残念ながら諸事情によりここで公開はできないが)……私よりも、ずっと彼女の気持ちを汲んだ応対を受け、いまごろ彼女は婦人警官たちと仲良くさえなっているかもしれない。
 110番してよかった。
 頼れる日本警察に拍手。

 しかし腹減ったなあ……
 とりあえずなにか食べよう。
 もう限界だ。
 ……ということで、つづく。

 と思ったら電話のかかってきた一時十五分。
 見慣れない電話番号。
 でも近所の市外局番。
 警察署だろう。
 
「ごめんなさい」

 妻だった。
 謝られても困る。

「いま警察署で、これから調書とるのであと一時間くらいかかるみたいだから、ご飯先食べてください」

 いやいやいや。
 そんなことよりも進展は?
 ていうか調書を取るということは。
 職質で引っかかった男というのはシロだったのか。
 ああ期待していたのに日本警察。

「あと、送ってもらって帰ったときに、上着わたすことになってます」

 食べてもいいしビールもいいが。
 寝るなということだ。
 まあ、寝られるわけもないが。
 妻は電話を切った。
 落ち着いている。
 上着か。
 で、気づく……あのいかつい警官は、なにもやさしさで彼女が着替えたいだろうから着替えを、と言ったのではなかったのだ……抱きついた犯人の痕跡が、その上着に残っているということ。
 繊維とか体液とか。
 犯人の指紋とか、そういうこと。
 あ……手袋って。
 いまのいままで気がつかなかった。
 指紋がつかないように手袋をはめて痴漢?
 イヤだな……プロっぽいじゃないか。
 痴漢のプロってのもおかしいが。

 なんにせよ、彼女が駆け込んだことで、この家に彼女の住んでいることは犯人に認識されているわけだし。
 おちおち、近所も歩けない。
 これはがっつり巡回して職質してきっちり捕まえてもらわないと。

 まったく……
 無力感だけがつのる。
 世界中を疑って生きるわけにもいかないが。
 本当に背後に気をつけて生きないといけない国になってんだな。
 哀しい。

 餃子食べてくる。
 それでも生きなくちゃなんないから。
 妻はなにか食べさせてもらってんだろうか……

 現在、二十五時三十分。
 ここまで二時間半のできごとだった。